「ドバイコレクション2019」パラ陸上世界選手権編

陸上 2019年11月15日
写真:義手をつけて走る重本沙絵

上肢切断400メートル日本代表の重本沙絵選手が装着する義手を作るのは、義肢装具士の藤田悠介さん(鉄道弘済会義肢装具サポートセンター)。藤田さんは、「選手がかっこよく見えるには、装具もかっこよくないといけない。そういう時代になってきた」と話します。

20年間取材している中で「パラスポーツの何が変わったか?」と尋ねられると、まず第1番目は『記録の向上』です。2000年シドニーパラリンピックの義足クラスの男子走り幅跳びでは、金メダリストただ一人が6メートルを超え「凄い!」と言われましたが、今や世界記録は8メートル48センチです。ちなみにこの記録はリオ五輪の金メダリストをも上回ります。

そして2番目は?と言うと『洗練されてきた』ことです。
特に2012年のロンドンパラリンピック以降、パラリンピックに注目が集まり、五輪と同様に選手やチームにスポンサーがつき始めると、選手のユニフォームをひとつとっても様変わりしてきました。今や、取り入れられる洗練されたデザインは、他メジャー競技のものと変わりありません。
なかでも、パラリンピック特有なのが、装具(義足や義手など)やアイマスク、車いすなどの道具です。以前は、無機質なものややぼったいものが多かったのですが、選手によっては、オシャレアイテムの一部になっていて、“女子力高め”なこだわりの道具を持つ選手もいます。その理由を尋ねてみると「競技場は私のステージなの」「他の選手と差別化したい」と話します。

そんなハイセンスな選手たちが使用する、個性がぎゅっとつまった道具にスポットを当て、アラブ首長国連邦で開催されたパラ陸上世界選手権より「ドバイコレクション2019」と題してご紹介します。

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視覚障害の走り幅跳びに出場した、イタリアのアリオラ・デダイ選手。
アニメの美少女のような大きなキラキラの瞳が印象的です。

写真:「SPORTS」と書かれたアイマスクをつけて幅跳び
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視覚障害の短距離に出場したブラジルの、ロレナ・サルバチニ スポラドレ選手。
下写真のアイマスクに書かれた文字(MAE PAE)の意味は、「パパ・ママ、愛してる」。
今大会にはそれぞれ出場種目に合わせて5つも持参し、夜の試合では、照明にきらきら輝き光るアイマスクもありました。
また、ハートで結ばれた、彼女自身と彼氏のイニシャルが刺繍されたアイマスクもあり、映像を通して、世界中に二人のラブラブぶりが伝わるなんて、アスリートならではです。

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続いて、上肢切断の短距離に出場したポーランドのアリツィア・イェロミン選手(中央)の黄金の義手は、灼熱のドバイの太陽にとても映えています。

写真:青と白のストライプに、赤い〇をデザインした義手をつけた選手
写真:自分が走っている姿を台に腕を置きスタートする選手

短距離のスタート地点、手の支えに、オリジナルで制作した様々な台座を使う選手たちがいます。

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こちらは、上肢障害の走り幅跳びに出場したフランスのアルノー・アスマニ選手。
義手がアフリカのキリンを草間彌生さんがデザインしたような独特なセンスがカッコ良くて目を引きます。

写真:ピンクのスパンコールの右足義足。スニーカーはショッキングピンク
写真:黒の網目素材の義足

選手たちが競技以外で使用する日常用義足が、以前と比べて数段オシャレになっています。
下の写真の、複雑な形状の義足(のカバー?)は、3Dプリンタで製作をしたそうです。テクノロジーの進化が道具の進化につながっています。

写真:銀のヘルメットでレースを行う、マルセル・フグ選手

最後に、一番前(右)を走る車いすアスリートは、スイスのマルセル・フグ選手。
2004年あたりからこのようなピカピカのシルバーヘルメットを着用しているので、『銀の弾丸』と呼ばれていたりしています。
以前、車いすのホイールをドーナツの柄にしていた時期もありました。
マルセルは数々の世界記録樹立を打ち立て、パラリンピックでも金メダルを獲得、現在も車いすアスリート陸上界の頂点に君臨する一人です。


こだわりの道具には、選手の個性やセンスがつまっていて見ているだけで、楽しくなります。
来年の東京パラリンピックでも、選手たちが使用する道具に注目してみるのはいかがでしょうか!


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写真家 越智貴雄

写真家 越智貴雄(おち・たかお)

2000年のシドニーパラリンピックから国内外のパラスポーツの撮影取材活動を続けている。2012年、陸上アスリートの競技資金集めの為、セミヌードカレンダーを1万部出版し国内外で話題となる。2013年9月のブエノスアイレスでの2020東京オリンピック・パラリンピック招致最終プレゼンテーションで映し出された「跳躍の写真」が話題になる。2014年、義足を美しくかっこよく履きこなす女性たちを撮影した写真集「切断ヴィーナス」を出版。2017年、寝たきりのお笑い芸人“あそどっぐ”さんの写真集「あそどっぐの寝た集」を出版。取材活動の他にも写真展開催や義足女性によるファッションショーなど、多数開催している。NHK-BS1「パラ×ドキ」に出演中。

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