鈴木朋樹、東京パラで「モンスター狩り」へ! 大分車いすマラソン2020

陸上 2020年11月27日
写真:大分車いすマラソン、集団から抜け出し先頭に立つ鈴木朋樹選手

新型コロナウィルスの影響から、これまで39回開催されてきた大分国際車いすマラソンが来年に延期となり、代替大会として、国内選手だけが参加できる独自大会として「大分車いすマラソン2020」が11月15日に開催されました。

今年は、新型コロナウィルスの影響で、国内外の多くの大会が中止・延期される中、レースの興奮を感じさせてくれた選手達、大会を開催して頂いた大会関係者の皆様には感謝しかございません。2019年と2021年をつなぎ「スタートは希望のはじまり」をテーマにした今大会は、世界で初めて車いす単独で開催されたマラソン大会(1回目、2回目はハーフのみ)の歴史と、世界最大規模で続けてきた実績がある大分だからこそ、開催できた大会だと感じました。

写真

スタート地点に移動する選手たち。いつもの国際大会では、号砲前、沿道は関係者や応援する人たちが詰めかけ、盛り上がりを見せますが、今大会、新型コロナウィルス感染拡大の影響で沿道に人は少なく、スタッフも最小限で寂しいものとなりました


僕は、撮影場所を悩みに悩んだあげく、東京パラリンピック出場に関わる大事なレースなだけに、先頭集団だけを撮影できる報道専用車から撮影することに決めました。11月に入り暑くもないのに、スタート前から、額からは汗が噴き出し、服からは汗から出来た塩の結晶がうっすら浮き出ています。それほど、僕も緊張していました。

写真:勾配のきつい弁天大橋を抜け出す鈴木選手

レース開始早々、予想しなかった出来事が起こりました。
てっきり、東京パラリンピック選考に関わる重要なレースなだけに混戦になると考えていたのですが、日本人で唯一、車いすマラソンで東京パラリンピック出場内定を決めている鈴木朋樹選手が、スタートから周り選手の動向を一切気にすることなく、自身のペースでレース展開。スタートから3キロ手前の弁天大橋上りでは、多くの選手が鈴木選手のスピードについていけず、第2集団が形成されました。スタートから8キロを過ぎるあたりからは、カメラから第2集団も見えなくなり、鈴木選手はゴールまで単独で走り続け、1時間22分2秒の好記録で優勝しました。

風の抵抗を考えて他の選手たちと先頭を入れ替わりながらレース展開するのがよくある車いすマラソンのパターンですが、終始、前からの風を受け続けた中での、この好記録は、鈴木選手のレベルの高さを示しています。

大分国際車いすマラソンで、こういったレース展開は、過去、何度か見てきました。しかし、それは、パラリンピックで金メダルを獲得するような、マルセル・フグ選手(スイス)やアーンスト・ファン ダイク選手(南アフリカ)、マラソン世界記録保持者のハインツ・フライ選手(スイス)らが好調時にスタートから周りの選手が誰もついていけない、圧倒的な強さとパワーでレースに出場した時の話。今回は、国内選手だけで開催された大会とはいえ、鈴木選手が見せた独走は、日本人選手が見せた新しい歴史の1ページと言っても過言ではありません。

写真:独走態勢の鈴木選手

鈴木選手は、海外のパラリンピックでメダルをとるような強豪選手たちのことを「モンスター」と称します。終盤、鈴木選手がみせた一人で力強くレーサーをこぎ続ける姿は、モンスター退治に出かける若き勇者に見えてきました。


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写真家 越智貴雄

写真家 越智貴雄(おち・たかお)

2000年のシドニーパラリンピックから国内外のパラスポーツの撮影取材活動を続けている。2012年、陸上アスリートの競技資金集めの為、セミヌードカレンダーを1万部出版し国内外で話題となる。2013年9月のブエノスアイレスでの2020東京オリンピック・パラリンピック招致最終プレゼンテーションで映し出された「跳躍の写真」が話題になる。2014年、義足を美しくかっこよく履きこなす女性たちを撮影した写真集「切断ヴィーナス」を出版。2017年、寝たきりのお笑い芸人“あそどっぐ”さんの写真集「あそどっぐの寝た集」を出版。取材活動の他にも写真展開催や義足女性によるファッションショーなど、多数開催している。NHK-BS1「パラ×ドキ」に出演中。

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