パラ種目を見る機会が広がると

陸上 2017年6月27日
競技中の渡辺勝選手と樋口政幸選手

去年、初めてパラリンピック種目が実施された日本陸上選手権。今年の大会(最終日25日・ヤンマースタジアム長居)でも2年連続でパラリンピック種目「男子車いす1500メートル(T54)・男子100メートル(T42/44/47)」が行われた。

観客の声援に応える渡辺勝選手
競技前、選手コールに笑顔で観客の声援に応える渡辺勝。多くの選手が、この大舞台を楽しんでいるように見えた。

印象的だった事が2つある。1つ目は、競技前の選手がみんな楽しそうだった事。男子車いす1500メートル(T54)で優勝した渡辺勝(TOPPAN)は競技後に「パラ種目を見てもらえる機会はなかなか少ない。競技開始前に他の選手たちとも話し合い十分に気合を入れて臨んだ。車いす競技の魅力を少しでもたくさんの人に見てもらえたのではないかと思う」と話してくれた。

競技中の渡辺勝選手と2位の樋口政幸選手
最後の直線ホームストレートで競り勝った渡辺勝(右から2人目)と2位の樋口政幸

残念ながら雨でコンディションはよくなかったが、なにかやってやろう、初めて目にする観客たちに車いすレースの魅力を見せつけたい!という選手の気持ちをひしひしと感じたレースだった。

4人の選手たちを撮影
男子100メートル(T42/44/47)に出場した選手たち

2つ目は、競技後の記者から選手たちへのインタビュー内容だ。以前は、健常者の大会でパラ種目が行われると、競技以外のバリアフリーや競技環境に関する話題が多く飛び交っていた。それが今大会では、競技についての質問がほとんどだった。

国内外の陸上大会において、健常者の大会にパラリンピック種目が組み込まれる機会が格段に増えたからだろうか。選手権大会なので、競技として見られるのは当たり前のことなのだが、観客の盛り上がりを見ていると競技としてのパフォーマンスがじわりじわりと伝わってきているのではないかと感じた。

ロンドン市内の地下鉄構内に貼られているパラ世界陸上のポスター
4月には、パラ世界陸上選手権のポスターがロンドン市内の地下鉄構内などの目立つ場所にいくつも張り出されていた。

来月にはイギリス・ロンドンで、世界パラ陸上選手権(7月14日から23日)が開催される。その翌月には同じ場所で世界陸上選手権(8月4日から13日)も開催される。“2つ”の世界陸上選手権が同時期同場所で開催されるのは、歴史上で初めてのことなのだ。4月、ロンドンマラソンの撮影取材に行った際に、7月の世界パラ陸上選手権のポスターがロンドン市内の地下鉄構内などの目立つ場所にいくつも張り出されているのに驚いた。

競技中の画像
2014年IPCグランプリファイナル大会。大会前にはIAAFダイアモンドリーグが開催されていた。

このきっかけは2012年に開催されたロンドンパラリンピックが盛り上がったことだろう。その後もイギリス国内では健常者の国際的な陸上競技大会(IAAFダイアモンドリーグ)と障害者の国際的な陸上大会(IPCグランプリファイナル)を同時期に行ったり、時には同日に行われてきた。

選手たちの表現がどんどん環境を変え、環境が選手を変えてきている。

写真家 越智貴雄

写真家 越智貴雄(おち・たかお)

2000年のシドニーパラリンピックから国内外のパラスポーツの撮影取材活動を続けている。2012年、陸上アスリートの競技資金集めの為、セミヌードカレンダーを1万部出版し国内外で話題となる。2013年9月のブエノスアイレスでの2020東京オリンピック・パラリンピック招致最終プレゼンテーションで映し出された「跳躍の写真」が話題になる。2014年、義足を美しくかっこよく履きこなす女性たちを撮影した写真集「切断ヴィーナス」を出版。2017年、寝たきりのお笑い芸人“あそどっぐ”さんの写真集「あそどっぐの寝た集」を出版。取材活動の他にも写真展開催や義足女性によるファッションショーなど、多数開催している。NHK-BS1「パラ×ドキ」に出演中。

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