大会のヒーロー&ヒロインが生まれる瞬間!

2019年6月10日
大会のヒーロー&ヒロインが生まれる瞬間!

写真:満員の観客が両手を上げている

地元選手の活躍に、スタジアム全体が盛り上がる
これだけ大勢の観客と選手が一体となる様子に涙が出てきた(2012ロンドンパラリンピック)

パラリンピックで注目される選手たちはたくさんいます。その注目を浴びた選手の中でも、大会を通じて結果を出し観客らと一体となることで、さらに輝きを増した選手たちがいました。過去10大会の取材した中から、輝きが増したヒーロー&ヒロインたちをご紹介します。

写真:開催国、オーストラリアの「エイミー・ウィンターズ(Amy WINTERS)」 /シドニーパラリンピック(2000年・夏季)

開催国、オーストラリアの「エイミー・ウィンターズ(Amy WINTERS)」 /シドニーパラリンピック(2000年・夏季)

陸上短距離、100m金メダル、200m金メダル、400m銅メダルを獲得。
大会の日を追うごとに「エイミーを見たい!」と観客がスタジアムに訪れ、大会の象徴的存在となった。
オーストラリア人はスポーツ観戦などで、ハイテンションになると、「Aussie Aussie Aussie!!(オーズィー、オーズィー、オーズィー)」に対し「Oi Oi Oi(オイ、オイ、オイ)」と呼応する応援の掛け声が定番だが、エイミーが登場すると、「Amy Amy Amy!!(エイミー、エイミー、エイミー)」に対し「Oi Oi Oi(オイ、オイ、オイ)」という、同じリズムに包まれた。
これはオーストラリアの選手にとって最高の栄誉かもしれない。
ウィニングラン時には、会場のボルテージは最高潮に達し、掛け声が地響きのようにスタジアムに響き渡り、鳥肌が立ったのをよく覚えている。

写真:開催国、アメリカの「パラアイスホッケーチーム」 /ソルトレークパラリンピック(2002年・冬季)

開催国、アメリカの「パラアイスホッケーチーム」 /ソルトレークパラリンピック(2002年・冬季)

強豪ノルウェーを下し、見事、金メダルを獲得したアメリカチーム。
決勝戦の試合中は、観客の興奮の熱量で、スタジアムが大きなゆりかごになって動いているような感覚を覚えた。
優勝が決まった瞬間、アメリカチームの全員がリンク中央に集まり、喜びを爆発させた。

写真:カナダの車いすバスケットボールプレイヤー「パトリック・アンダーソン(Patrick ANDERSON)」 /アテネパラリンピック(2004年・夏季)

カナダの車いすバスケットボールプレイヤー「パトリック・アンダーソン(Patrick ANDERSON)」 /アテネパラリンピック(2004年・夏季)

世界中から、「NBAクラス」「車いすバスケ界のマイケルジョーダン」と賞賛される、パトリック。
98年世界選手権で得点王に輝き、シドニー大会決勝戦でも23得点を叩き出し優勝に貢献。
アテネ大会では、チームキャプテンを務め、パラリンピック2連覇へ導いた。
競技パフォーマンスは、圧倒的に凄かったが、彼のインタビュー時の発言が、いつもチームメートに対しての信頼と尊敬の言葉に溢れていて、何を聞かれても「We(私たち)」から言葉が、とても印象的だった。
東京パラリンピックでは、どんな活躍を見せてくれるのだろうか。

写真:アルペンスキー 視覚に障害のある選手(後方)の滑走を音でサポートするガイドスキーヤー
写真:地元イタリアの女子アルペンスキーヤー「シルビア・パーエント(Silvia PARENTE)」 /トリノパラリンピック(2006年・冬季)

地元イタリアの女子アルペンスキーヤー「シルビア・パーエント(Silvia PARENTE)」 /トリノパラリンピック(2006年・冬季)

視覚障害クラスで、金1個・銅2個を獲得したシルビア。
五輪と同じコースで行われる、このアルペンスキー競技。
視覚障害クラスの選手は、アイマスクを装着し、前を滑るガイドスキーヤーの声などを頼りに斜面を滑り降りるが、アイマスクを装着しながらの滑降は、見ている側もドキドキハラハラする。常に危険と隣り合わせの競技だ。
なので、命を預けることになるガイドスキーヤーとは心から信頼できる関係が必須になってくる。
シルビアのガイドスキーヤーは、金メダルを獲得したゴール後に、シルビアにキス。
会場が大いに盛り上がった瞬間だった。

写真:車いすテニスプレーヤー「国枝慎吾」 /北京パラリンピック(2008年・夏季)

車いすテニスプレーヤー「国枝慎吾」 /北京パラリンピック(2008年・夏季)

この大会で国枝は、シングルスで初の金メダルを獲得した。
世界ランク1位として第1シードで臨んだ大会で、前大会覇者、ロビン・アマラーン(オランダ)を6-3、6-0と圧倒、決勝までの5戦で、落としたのは9ゲームだけの全てストレート勝ち。まさに「圧勝」だった。
国枝が、アテネ以降、技術強化とともに重点的に取り組んだのが、メンタルトレーニング。
カウンセラーのアン・クイン氏に師事し、「自分は最強だ」と鏡の中の自分に向かって毎日唱え、同じ言葉をラケットにも刻んだと言う。
東京パラリンピックでも金メダルに期待がかかる。

写真:パラアイスホッケーの「日本代表チーム」 /バンクーバーパラリンピック(2010年・冬季)

パラアイスホッケーの「日本代表チーム」 /バンクーバーパラリンピック(2010年・冬季)

準決勝で、優勝候補と目されていた開催国のカナダチームを、なんと日本チームが3-1で撃破した。
日本の大金星に世界中が驚き、日本の応援団や関係者は、あまりの驚きと喜びでみんな大興奮!
一方、対照的だったのは地元カナダの観客。落胆してため息がもれる静かな観客席。
カナダ国内では、この試合を境にパラリンピック熱が下がったという話もあったぐらいだ。
日本国内では、アメリカとの決勝戦が、パラリンピック競技として初めて、NHK総合で生放送されたという話も話題に。
キャプテンを務めた遠藤隆行(写真)は、大会を通じて最も活躍した選手に贈られるファン・ヨンデ 功績賞を日本人として初めて受賞した。
その遠藤は、現在、東京パラリンピックに向けて、ボートでの出場を目指している。

写真:両脚義足のブレードランナー「オスカー・ピストリウス(Oscar PISTORIUS)/ 写真右」。 /ロンドンパラリンピック(2012年・夏季)

両脚義足のブレードランナー「オスカー・ピストリウス(Oscar PISTORIUS)/ 写真右」。 /ロンドンパラリンピック(2012年・夏季)

ピストリウスは、ロンドンオリンピックの男子陸上400mとリレーに出場していたこともあり、彼の一挙手一投足に注目が集まっていた。
開会式当日には、プレスセンターにおいて、オスカー単独の記者会見が行われたほどだった。
ロンドンパラリンピックでは、200m銀・400m金・リレー金を獲得。
パラリンピックに大きな注目が集まるきっかけを作ったひとりであることに間違いはない。

写真:日本が獲得した6個のメダルのうち、5個のメダルを獲得したアルペンスキー「チェアスキー選手」 /ソチパラリンピック(2014年・冬季)

日本が獲得した6個のメダルのうち、5個のメダルを獲得したアルペンスキー「チェアスキー選手」 /ソチパラリンピック(2014年・冬季)

金メダルを獲得した狩野亮(写真)、鈴木猛史、銀メダルを獲得した森井大輝らの活躍に注目が集まったが、チェアスキーを制作開発するメカニックにも注目が集まるきっかけとなった。
1本のスキー板で、大きくジャンプ!100キロを超えるスピードは圧巻だ!

写真:男子シッティングバレーボールで金メダルを獲得した「イランチーム」 /リオデジャネイロパラリンピック(2016年・夏季)

男子シッティングバレーボールで金メダルを獲得した「イランチーム」 /リオデジャネイロパラリンピック(2016年・夏季)

チームの中に壁のような選手がいた。どんな、アタックも跳ね返されてしまう。
その選手の名前は「モルテザ・メヘルザードセラクジャーニー(MEHRZADSELAKJANI Morteza)」(写真中央)。
身長は、なんと246cm。
競技は座って行うが、他の選手と比べて高さは圧倒的。
高さを生かしたアタックに、観客も大歓声を送っていた。

写真:両手をあげて笑顔の成田緑夢

パラスノーボードで、金1個・銅1個を獲得した「成田緑夢」 /ピョンチャンパラリンピック(2018年・冬季)

兄姉がオリンピック選手であったこと、NHK総合テレビで生中継されたこともあり、メディアで大きく取り上げられ注目を集めた。
ある調査では、日本国内の成田の認知度は50パーセントを超えているという結果も。パラリンピアンとしての知名度は一番だ。
去年、スノーボードを引退し、現在は、陸上・走り高跳びで東京パラリンピック出場を目指している。

写真:1500メートルでのラスト一周、観客は総立ちになり、熱い声援を送ったリオデジャネイロパラリンピック(2016)

1500メートルでのラスト一周、観客は総立ちになり、熱い声援を送った
リオデジャネイロパラリンピック(2016)

東京パラリンピックでは、誰が、大会のヒーロー&ヒロインになるのだろうか?
そのヒーロー&ヒロインたちが歴史となり、未来を形作っていく。
僕は、楽しみでならない。

写真家 越智貴雄

写真家 越智貴雄(おち・たかお)

2000年のシドニーパラリンピックから国内外のパラスポーツの撮影取材活動を続けている。2012年、陸上アスリートの競技資金集めの為、セミヌードカレンダーを1万部出版し国内外で話題となる。2013年9月のブエノスアイレスでの2020東京オリンピック・パラリンピック招致最終プレゼンテーションで映し出された「跳躍の写真」が話題になる。2014年、義足を美しくかっこよく履きこなす女性たちを撮影した写真集「切断ヴィーナス」を出版。2017年、寝たきりのお笑い芸人“あそどっぐ”さんの写真集「あそどっぐの寝た集」を出版。取材活動の他にも写真展開催や義足女性によるファッションショーなど、多数開催している。NHK-BS1「パラ×ドキ」に出演中。

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