多様な泳ぎを見てほしい!トビウオパラジャパンの見どころ解説

競泳 2021年8月24日
写真:東京パラリンピック競泳に出場する選手たち

自らの“肉体”と推進力でタイムを競う競泳。パラ競泳の肉体は目が見えにくかったり、体のどこかの機能が制限されていたりと、誰一人同じ“ではない”のが大きな特徴です。

一方で、パラ競泳のレースには同じ条件でくくられた『クラス分け』があります。「数が多くてわかりにくい…」と始めは思うかもしれませんが、見始めると「選手たちが平等にスポーツを行うためにまとめられたもの」と感じていただけるかと思います、難しいことはありません!世界レベルの多様な泳ぎや工夫、そしてこん身の泳ぎからなるデッドヒートを楽しんでくださいね。

この見どころ記事は、NHKパラリンピック放送リポーターの三上大進リポーターの取材や、過去の番組の取材をもとにまとめました。今回取り上げていない選手・熱戦も、NHKの放送やライブストリーミングでご覧いただけます。世界最高峰のパラ競泳をぜひご覧ください!

放送予定→ https://sports.nhk.or.jp/paralympic/programs/broadcast/

ライブストリーミング予定→ https://sports.nhk.or.jp/paralympic/schedules/

※予定は変更になる場合があります。最新の状況は都度お確かめください。

8月25日(水)

「左脚の力強い泳ぎに注目!」女子100m背泳ぎ(S2)山田美幸

写真:背泳ぎをする山田選手

【レースの見どころ】
中学3年の新星・山田選手(14歳)と、シンガポールのピンシュー・イップ選手の金メダル争いが予想されます。
山田選手は、生まれたときから両腕が無く、両脚の長さも異なります。その脚を左右別々の動きで水を蹴り、さらに、両肩の「肩先」を前後に動かして推進力を得ています。
現在世界ランキングは2位の山田選手は、東京パラリンピック日本代表の最年少。この1年で急成長しました。「泳ぐたびに自己ベストを更新していきたい。メダルを獲れたらうれしすぎて飛び跳ねて、
頭のネジが1、2本外れるかも!」と、事前の取材ではおちゃめに答えてくれました!

【他にも】

男子100mバタフライ(S14・知的)東海林大
: 1秒強以内に3選手がひしめく!金は誰の手に?
男子100mバタフライ(S13・視覚)イハル・ボキ(ベラルーシ)
: リオ6冠の王者!はたして東京は?

8月26日(木)

「“暗闇”で速く美しく泳ぐ!」男子400m自由形(S11・視覚)富田宇宙

写真:ブラックゴーグルをかけて泳ぐ富田選手

【レースの見どころ】
視覚障がいの最も重いクラスのS11。完全に視覚を遮断するブラックゴーグルをかけて泳ぎます。パラリンピック初出場の富田選手の初戦は得意種目。この後のレースに向け勢いづきたいところです。
暗闇の中を泳ぐため、コースロープに接触することが多く、まっすぐ泳ぎ続けられるかが最大のポイント。また、ターンも見えないため、棒で選手の頭を叩いて合図するタッパーとの呼吸が試されます。
富田選手の400m自由形の世界ランキングは現時点で2位。オランダのロヒール・ドルスマン選手らと、金メダルをかけて争います。

【他にも】

男子100m自由形(S4・運動機能)鈴木孝幸
: 2秒以内に3選手が!三つ巴の戦いを制すのは。
男子100m自由形(S5・運動機能)鄭涛(中国)
: クラスがS6からS5に。両腕は無く、全身をうねらせるようにしてスピードを生む泳ぎは圧巻。パラリンピックを象徴する存在としても有名。

8月27日(金)

「見えない恐怖を乗り越え、苦手の飛び込みを克服」女子50m自由形(S11・視覚)石浦智美

写真:手を高く上げ泳ぐ石浦選手

【レースの見どころ】
生まれたときから緑内障で、高い眼圧により視力が下がり続けている石浦選手。最も障がいが重い、全盲S11のクラスで参戦します。
強みは脚力で、飛び込んでからのドルフィンキックで一気に差をつけます。光をわずかに感じる程度の視力の石浦選手は、コロナ禍では障がい特性から周囲と距離を取ることなどに苦労してきました。「ひとりではここまで来ることはできなかった」と話し、大会で活躍することで周りへ感謝を伝えたいと話していました。
現時点での世界ランキングでは、1位から7位まで「0秒54」の差。デッドヒートが予想されます。

【他にも】

男子50mバタフライ(S5・運動機能)日向楓
: 初出場の16歳。両腕のないバタフライは「ムチのような動き」がポイント。1回の蹴りの強さに注目!
アッバス・カリミ(難民選手団)
: アフガニスタン出身のカリミ選手。難民選手団として参加。

8月28日(土)

「全身のバネが推進力!パラリンピックの“集大成”」男子150m個人メドレー(SM4・運動機能)鈴木孝幸

写真:背泳ぎスタートの鈴木選手(左)、クロールの鈴木選手(右)

【レースの見どころ】
パラ競泳選手団団長の鈴木選手は、過去に個人メドレーで北京・ロンドンパラで銅メダルを獲得しています。生まれた時から両脚と右手がなく、左手にも障がいがある鈴木選手は現在34歳。前回のリオ大会ではパラ大会で初めてメダルを逃し、悔しさから体幹・筋力トレーニングを徹底的に見直しました。現在は、複数種目で世界ランキング3位キープしています。

今大会では再びのメダル獲得を目標に「パラリンピックの集大成」として臨みます。

【他にも】

男子100m平泳ぎ(SB6・運動機能)中村智太郎
: 5大会連続出場のベテラン。両腕が無く、足だけで力強く水を蹴る。
女子200m個人メドレー(SM8・運動機能)ジェシカ・ロング(アメリカ)
: 金13・銀6・銅4、計23個の「パラ競泳界の女王」。同種目4連覇を狙う。

8月29日(日)

「“日本代表の誇り”を胸に、大舞台へ!」男子100m平泳ぎ(SB14)山口尚秀

写真:平泳ぎをする山口選手

【レースの見どころ】
知的障がいクラス日本のエース・山口選手の本命レース。本種目で世界記録を3度更新してきました。山口選手は、知的障がいを伴う自閉症で、急な予定変更や、先の見通しが立たなくなる事態への対応が難しく、コロナ禍や白紙になった予定に不安を感じ「気が遠くなるような気持ちだった」と話していました。そうした中で山口選手を支えたのは、「自分は日本代表なんだ、世界記録を持っているんだ」ということ。自分を“奮い立たせて”努力し続けました。

「東京大会で活躍することで、いろいろな人がいると知ってもらって、障がいのある人もない人も輝ける世の中にしたい」と願いを込める山口選手の泳ぎに注目です!

【他にも】

男子50m自由形(S9・運動機能)シモーネ・バルラーム(イタリア)
: 2019年の世界選手権で金メダルを5つ獲得した新星。長身を生かしたパワフルなストロークは必見。

8月30日(月)

「“見えない”ふたりの、切さたく磨」男子200m個人メドレー(SM11・視覚)木村敬一、富田宇宙

写真

2018年10月ジャカルタアジアパラ大会 木村敬一選手(中央)、富田宇宙選手(左)

【レースの見どころ】
現時点でこの種目の世界ランキングは、木村選手(2位)、富田選手(3位)。日本選手二人が同時に表彰台にあがる可能性があります。SM11は視覚障がいの最も重いクラスで、ターンやゴールのタイミングで、頭を棒で叩いて位置を知らせるタッパーがいます。個人メドレーは、バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の4泳法。泳法ごとに、タッピングの場所やタイミングが異なり、タッパーとの「あうん」の呼吸にも注目です。

【ライバルとして支えあってきたふたり】

木村選手は先天性の疾患で、2歳のとき視力を失いました。小学生で水泳を始め、北京大会から今回で4度目のパラリンピックです。前回のリオ大会では4つのメダルを獲得しましたが、目標の金に届かず悔し涙を流しました。

富田選手は16歳で目の難病を発症。高校まで健常者の水泳、20代でパラ競泳を始めます。富田選手はリオ大会には出られませんでしたが、悔し涙を流す木村選手の姿に、涙。その後、徐々に視力が低下し、視覚障がいのもっとも重いクラスになり、このクラスの第一人者でけん引してきた木村選手と”ライバル”に。互いに切さたく磨しながらレースを迎えます。

木村選手は、パワフルな獅子のように水面に食らいつく泳ぎ。
富田選手は「スタートや、短距離のスプリントで、爆発的なスピード。視覚障がいのある選手の泳ぎとして、世界でもダントツ」と表現します。

一方、富田選手は伸びやかな鷹のように、水面の上を飛ぶような泳ぎ。
木村選手によると「どんなに負荷がかかっても我慢強く泳ぎ続けられる忍耐力がすごい」。
世界レベルの2人の泳ぎに注目です。

【他にも】

女子50m背泳ぎ(S5・運動機能)成田真由美
: 6大会出場の“水の女王”。「パラ競泳は、残された能力をフルに活用して泳ぐ姿が魅力。ただ泳ぎを見てもらって、いろんな感情を持ってもらえればうれしい」と語る。
男子200m自由形(S4・運動機能)鈴木孝幸
: 1位と2秒強差のタイム。後半のデッドヒートに注目。

8月31日(火)

「楽しんで、自分らしく泳げば、結果はついてくる!」男子200m個人メドレー(SM14・知的)東海林大

写真:笑顔で1番と指をさす東海林選手

【レースの見どころ】
知的障がいクラス日本のエース、東海林選手
の本命レース。2019年の世界選手権では本種目にて世界新記録を樹立し優勝しました。東海林選手は知的障がいがあり、『自閉スペクトラム症』と診断されました。周囲の期待をプレッシャーに感じやすく、重圧となり思うような競技ができないことがあります。
障がい特性から、気持ちのコントロールや急激な変化に適応するのが簡単ではなく、コロナ禍で先の読めない状況には苦労しましたが、時間をかけて、自ら楽しめる練習メニューを考えるなど、前向きに過ごせるよう、自分と向き合ってきました。

モットーは「楽しんで、自分らしく、泳ぐ」、それが東海林選手にとっての“本来の実力”を出す方法。前向きに気持ちを整えて、勝負の舞台に立ちます。

【他にも】

女子100m自由形(S7・運動機能)マッケンジー・コーン(アメリカ)
: 身長1m30cm。力強い泳ぎでリオ大会では3つの金メダルを獲得。アメリカでトレーニングをする木村敬一選手の練習パートナー。
女子400m自由形(S8・運動機能)モーガン・スティックニー(アメリカ)
: 病で左右の脚を相次ぎ切断。目指した舞台は、オリンピックからパラリンピックへ。

9月1日(水)

「好きな言葉は『楽しんだもん勝ち』レースも楽しむ!」女子100m平泳ぎ(SB13)辻内彩野

写真:笑顔で手を振る辻内選手

【レースの見どころ】
パラ競泳日本代表・副キャプテン、辻内選手
の得意種目。2019年世界選手権で銅メダルを獲得し、日本女子選手では唯一のメダリストになった。進行性の難病、黄斑ジストロフィーで、今も視力が低下し、視野も欠けています。

前半に引き離すようなスピード感ある泳ぎと筋力のある脚から出される強じんなキックが武器。コロナ禍の制限で、精神的にも落ち込みましたが、好きな言葉は「楽しんだもん勝ち」という明るさが魅力。その明るさがどんなレースにつながるか、注目です。

【他にも】

男子100m平泳ぎ(S11・視覚)木村敬一
: 3試合中2試合目のエントリー。1位と2秒強差のタイムをどう攻めるか。
女子200m個人メドレー(SM9・運動機能)ソフィー・パスコー(ニュージーランド)
: パラ大会5度目の出場。メダル15個を獲得しているニュージーランドのスーパーヒロイン。

9月2日(木)

「20年の集大成、“ラストレース”!」男子50m自由形(S4)鈴木孝幸

写真:スタートで飛び出そうとする鈴木選手

【レースの見どころ】
パラ競泳日本代表選手団長、鈴木選手
の大会最終レース。全レースでのメダル獲得なるか?
大会前の取材で、「パラリンピックとしては東京大会が最後になると思う」と話していた鈴木選手は、2004年のアテネ大会から5大会連続での出場。ライバルのイスラエルのダダオン選手は同大会で37秒38。差は0秒09で、金をかけた大接戦が予想されます。
また、鈴木選手は現在、IPCのアスリート委員会委員選挙に立候補しており「アジアのパラアスリートが国ごとに置かれている状況を伝えたい」という思いがあります。クールで熱い“日本の団長”の、ラストレースに注目です。

【他にも】

女子50m背泳ぎ(S2)山田美幸
: 14歳の最年少ヒロイン。ことし3月に自己ベストを8秒近く更新した種目。

9月3日(金)

「1・2フィニッシュの期待!」男子100mバタフライ(S11)木村敬一、富田宇宙

写真:バタフライをする富田選手(左)と木村選手(右)

【レースの見どころ】
視覚障がいクラスの2大エース、木村選手富田選手が揃って出場。1・2フィニッシュが高く期待される本大会最注目のレースの1つです。

<木村が語る富田選手>

「相手の存在が自分を速くしてくれているので、近くにいてくれることはどんな練習よりも効果があると思っているから、彼にはとても感謝している。今まであったものを失うという経験から立ち直り生きる強さはすごいと思うし、尊敬できる。(進行する)障がいを受容した速さも彼ならでは」

<富田選手が語る木村選手>

「障がい者としてもパラリンピアンとしても、大先輩の木村選手にはメダルを取って欲しいし、自分も同じようにそれを目指す。自分がパラリンピックに出てメダルを獲得して、みなさんにポジティブなエネルギーを届けるという目標のために努力を積んできたことだけは、自信を持って言えます」

【他にも】

女子50mバタフライ(S7)西田杏
: 9月3日が誕生日。「自分で自分にプレゼントをあげられるように頑張る」と語る。
男子100m背泳ぎ(S6)
 :中国の鄭涛選手が圧倒的強さで2連覇していたが、クラス変更に。パラリンピックの注目種目、新王者には誰が?


・・・・・

パラ競泳は、8/25(水)から9/3(金)まで、計10日間実施されます。世界トップレベルの熱戦、そして“多様な泳ぎ”をぜひご覧いただき、選手たちに応援を。そして、その醍醐味を味わっていただけるとうれしいです!

画像:三上リポーターのアイコン




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