16歳 “長い腕”で追いかける夢。パラ競泳・由井真緒里

競泳 2019年10月4日
写真:由井真緒里選手(右)、三上大進リポーター(左)

東京パラリンピックまで、残り約10か月。様々な競技で「若手選手」の成長が目立ち始めました。
今日ご紹介するのは、まさにその1人。
パラ競泳で注目の現役高校生、由井真緒里(ゆい・まおり)選手(16歳)にインタビューをしました。


既に100・200メートル自由形の2種目で、東京大会の参加標準記録(MQS)を突破。
専門種目の200メートル自由形で今年出した3分11秒78という記録は世界ランク9位(2019年9月末時点)で、強化Aランクに指定されています。

由井選手はラーセン症候群という障害のため歩くことができません。パラ競泳のクラス分けでは運動機能障害に分類される「S5」という、障害の重さが中程度の選手です。

写真:パラ競泳 クラス分け(運動機能障害)

*クラスの数字が小さいほど重い障害、大きいほど軽い障害になります。

Q.障害について

(由井選手) ラーセン症候群という珍しい病気で、それによって起きた合併症なんです。医師からは、首から下が動かない患者が多いと聞きましたが、その中でも腰から下だけが動かない、というケースは稀だそうです。
泳ぐときは腰から上の力だけで泳いでいます。

・・・

小さい頃から、水が大好きだったという由井選手。周囲もその気持ちを尊重しました。

Q.水泳との出会い

保育園のときから活発で(笑)水の中を全然怖がらなくて、むしろ水で遊ぶのが大好きだったんです。それを見ていた保育士さんの提案で、リハビリの一環として身体を動かすため、小学校1年のときに水泳を始めました。
小学校ではプールの時間があるので、1人だけ泳げないのはちょっと可哀そう…という母の願いもあったのですが(笑)


写真

△保育園の運動会。腕の力で登りました
・・・

小学校でも「おてんば少女」。
工夫の大切さを学んだのはこの頃でした。

Q.小学校時代のこと

普通の小学校で過ごして、先生のアドバイスも受けつつ「できること」をやっていました。
最初は「できない」と思っても、ちょっとした工夫で、できるようになることも多いんです。
車いすから降りて地面に這ってドッジボールをやったり、鬼ごっこも車いすで逃げたり(笑)
とにかく外で遊ぶのが大好きでした。

写真

△小学6年生で初出場した思い出の大会

Q.中学・高校に進学してからのこと

バリアフリー環境を考慮して、違う学区で普通の中学校に進学しました。この頃から水泳に本格的に力を入れ始め、ジャパラ(水泳競技大会)や日本選手権でもメダルを取るようになり、アジアユースにも出場しました。
手紙をくれる友達もいて、学校の友達の応援に励まされました。
高校に進学してもそれは変わらず、友達からの理解や応援は、競技の大きな支えになっています。学校にはエレベーターがあるのですが、実はボタンに手が届かないので、友達が押してくれています。学校生活でも協力してもらっているんです。

・・・

今年、より障害の重いクラスに認められた由井選手。有利な追い風で2020の舞台が現実味を帯び始めました。

Q.見直された「クラス分け」について

小学5年生で最初に受けたクラス分けはS7で、中学校3年生でS6に、そして今年の5月シンガポールのワールドシリーズでS5というクラスに変更になりました。
今回の結果を聞いた時は「何かの間違いでは?」と思いましたが、低身長*であることが加味されての見直しだったようです。(*由井選手の身長は123cm)


Q.東京大会への思い

200M自由形は世界ランク9位で、パラリンピックでも戦える可能性が見えてきました。
出場することは勿論、決勝に進むことを目標にしてます。3分台を切れれば決勝に残ることができると思うので、色々試しながら強化を進めて、代表選手選考会までにあと9秒タイムを縮めます。

・・・

世界に挑むため、週6日間のハード練習。
それでもまだまだ「足りない!」

Q.具体的に強化する点

腕が長いのが強みで、周りからもよく褒められます。腕が長ければ、その分かける水の範囲は広くなります。泳ぎでは有利になるのですが、肝心な筋力・体力が足りていないんです。
200メートルでも後半に行くにつれて目に見えてペースが落ちちゃって。その「落ち」を少しでも無くしたいので、筋トレの日を増やそうと思っています。
…ミニトマトが好きなので、それをパワーの源にして(笑)

写真:両腕を拡げる由井選手(前)と、三上リポーター(後)

この長い腕が最大の武器!比較しても一目瞭然。(私が短い説)
今ある強みを最大限に活かすために、これから特訓の日々です


――――――――――

次に由井選手が目指すのは、11/23・24に千葉県で開催される日本パラ水泳選手権大会。
2019年最後の大会で、憧れである現役レジェンド・成田真由美選手の持つ日本記録*更新を目指します。
(*3分8秒96。由井選手のベストよりも約3秒早い。)

両手を広げるパラ競泳・由井真緒里選手

由井真緒里(ゆい・まおり) 2002年10月28日生まれの16歳、群馬県立前橋西高等学校2年。身長123cm。生まれたときからラーセン症候群で腰から下が動かせず、移動には車いすを使用する。200メートル自由形を専門種目とし、尊敬する選手は同じS5クラスの成田真由美。趣味はオタク活動で、アニメや漫画、「歌い手」とカテゴライズされるシンガーのファン。名前の由来は母の夢に「真緒里」という3文字が浮かび上がって来たこと。

キーワード

三上大進
三上大進

三上大進(みかみ・だいしん)

1990年10月20日生まれ 東京都出身 左上肢機能障害 【資格】日本化粧品検定1級、コスメコンシェルジュ、TOEIC900点 【趣味】ショッピング、映画鑑賞、スキンケア 【スポーツ歴】スキューバダイビング、テニス 【メッセージ】パラスポーツを観たことはありますか?個性豊かな選手たち、向き合う障害、想像を超える競技…。知るほどに心が震える瞬間を1人でも多くの方に体験して頂けるように、ときめく熱いリポートをお届けします!

おすすめの記事