【11/12(火):DAY6】「TOKYO」の主役は誰だ?-パラ陸上世界選手権2019

陸上 2019年11月12日
写真:パラ陸上世界選手権 6日目見どころ

中西麻耶選手が女子T64クラスの走り幅跳びで金メダル!鈴木徹選手が男子T64クラスの走り高跳びで銅メダルを獲得するという、うれしいニュースが続きました。
リポーターの後藤佑季です。こちらの記事では、6日目の見どころの一部をお伝えします!

■ 同世代で競い合って! 片足大腿義足 走り幅跳び・ 前川楓 (まえがわ・かえで)兎澤朋美 (とざわ・ともみ)T63

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前川楓選手(左)と、兎澤朋美選手(右)


前川楓選手、21歳。リオデジャネイロパラリンピックで4位入賞、前回大会ロンドンの世界選手権では銀メダルを獲得した、日本女子大腿義足クラスのエースの一人です。

2018年、アジアで初の4m台を出し、ことしの2月には4m07の自己ベストを更新しました。

写真:跳躍をしている前川楓

もともとバスケットボールに取り組んでいた前川選手は、事故で足を切断した後、持ち前の運動センスと負けん気の強さ、そして、やると決めたら努力し続ける集中力で、記録を伸ばしてきました。

前川選手といえば、指導をされているコーチも有名な方です。
井村久美子(いむら・くみこ)(旧姓:池田久美子)さん、“イケクミ”の愛称で人気を博した女子走り幅跳びの日本記録保持者(6m86)で、北京オリンピックにも出場した元日本女王です。
夫の俊雄(としお)さんとともに、前川選手を指導しています。

4m台を安定して出せるようになった前川選手ですが、自分はあがり症だと話します。
「気持ちが強すぎて、肩が上がってしまって腕の振りが小さくなってしまいます。そこをうまく克服できるよう頑張りたいです。(大舞台を経験しているので)コーチにも、メンタルの相談をしています。」

写真:跳躍をしている兎澤朋美

そんな前川選手の同世代のライバルであり、現日本記録・アジア記録(4m44)保持者が兎澤朋美選手です。
まだ本格的に競技を始めて約2年の新星。2018年のアジアパラでは銅メダルを獲得しました。年齢は前川選手の1つ下で、お互いに「楓ちゃん」「ともちゃん」と呼び合います。

この兎澤選手、今シーズンの飛躍がすごいんです。
それまでの日本記録を40cm近く上回る4m44を6月に出すと、その後もコンスタントに4m20前後を出しています。
実測では4m70前後を跳んだこともあるという兎澤選手は、「世界選手権でもそれくらいは出せるのではないか」と話します。

飛躍の要因については
「義足自体が合ってきたこと、跳躍もようやく少しずつやりたい動きができるようになってきたことが理由だと思います。練習でできていたことが、今までは大会ではできなかったのだけど、それができるようになってきた。メンタル面でも成長してきたのかなと思います。」と話します。

海外の強豪クラブチームのもとに、1人で合宿にいくなど、あくなき向上心が兎澤選手の成長を支えています!(英語も、わずか半年で急速に上達し、海外選手ともスムーズに話せるように…!)

この同年代の2人、世界との戦いに注目です!


前川楓選手と、兎澤朋美選手の出場予定

11/12(火)女子走り幅跳び(T63)決勝
11/13(水)女子100m(T63)決勝
※予定は変更になる場合があります。

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■帰ってきた女王 両足大腿義足 走り幅跳び・バネッサ・ロー(オーストラリア)T61

写真:バネッサ・ロー選手

バネッサ・ロー選手は競技人口の少ないT61(両足大腿義足)の選手で、切断クラスでは一番障害の程度が重いクラスです。
2016年リオパラリンピックでは、走り幅跳びで金メダル、100mで銀メダルを獲得した義足クラスの女王です。

世界選手権やパラリンピックの走り幅跳びでは、T61とT63のクラスが併せて実施されます。
去年は腰痛により、いいパフォーマンスができなかったというロー選手。
復帰初戦の大会でいきなり5m05を出し、世界記録を更新します。

この記録は、日本の前川選手や兎澤選手などがいる片足大腿義足(T63)クラスの世界記録を上回っています。

写真:バネッサ・ロー選手

両足大腿義足の走り幅跳びは、最も難しいと言われている種目の一つです。
なぜなら、足首や膝で行っている「調整機能」を全て義足という自分の体ではないものに置き換え、なおかつ、全体重をその「自分の体でないもの」にかけて踏み切ることが必要だからです。さらに、踏切板に「合わせる」のは至難の技なのです。

ロー選手に同じクラスとして戦うことになる兎澤選手、前川選手について聞いたところ、
「昔はヨーロッパだけで戦っていたけれど、最近はアジア、特に日本の選手が伸びてきたわね。兎澤選手も前川選手もいい跳躍をしていて、迫ってきていることを感じる。私もがんばらないといけないわ。でも、世界選手権や2020年に勝つのは私よ。」と伸びてきていることを感じつつも、王者の風格を感じさせました。
※ロー選手は2017年6月にオーストラリア国籍を取得しました。

▽バネッサ・ロー選手の出場予定

11/12(火)女子走り幅跳び(T63)決勝
※予定は変更になる場合があります。

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伊藤智也vsレイモンド・マーティン 東京大会前“最後”の戦い

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11(月)の夜に行われた予選では、マーティン選手が1位、伊藤選手は2位。しかし、伊藤選手は17秒35で日本記録を更新。さらにアジアレコードをたたき出しました。
2012年のロンドンパラリンピックでは、マーティン選手が金(17秒02)、伊藤選手が5位(18秒74)でした。その戦いが7年後、ふたたび行われます。
マーティン選手の体重は45キロと軽く、初速がつきやすいのが特徴。一方で、先日の400mのレースで伊藤選手がとった戦法は“先行逃げ切り”。そのパワーに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
今回、マーティン選手は仕事の都合で1500mのレースに出場しないため、世界大会レベルのレースはこれが最後。次の舞台は、東京です。

▽男子100m(T52)決勝 放送時間

11/13(水) 午前1時37分頃(火曜深夜)
※予定は変更になる場合があります。

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パラ陸上世界選手権 伊藤智也「レジェンドのフルスロットル」(2019/11/11)



■走っているときは二人でひとつ デビッド・ブラウン(アメリカ)T11

写真:デビッド・ブラウン選手(左)と、伴走者のジェローム・エイバリーさん

リオパラリンピック陸上100mの視覚障害が最も重いT11のクラスで、パラリンピック史上初めて10秒台の記録を打ち立てたデビッド・ブラウン選手と伴走者のジェローム・エイバリーさん。2人が東京パラリンピックで目指すのは、世界記録(10秒92)の更新です。
6歳の時、病気で左目を失明。右目もほとんど見えません。かつてはレース中に何度も転倒を経験し、暗闇の中を全力で走ることには常に恐怖や不安がつきまとってきたといいます。

ブラウン選手の恐怖を取り除いてくれる存在、それが隣を走る伴走者のエイバリーさんです。2人が握るのは長さ10cmほどのロープ。もともとは選手がまっすぐ走ることができるようにガイドするためのものでしたが、二人の動きはまるで1人で走っているかのように見事に一致します。

“ふたり”のシンクロ率の高さの秘密を「地面の反発力」「腕の動きのCG解析」などの最新の映像解析で迫りました。

世界選手権の大会記録は、別の選手が出した『11秒08』。ブラウン選手とエイバリーさんが、10秒台の記録を打ち立てられるかに注目です。


▽男子100m(T11)試合時間

11/12(火) 夜11時6分頃 準決勝
11/13(水) 夜11時36分頃 決勝☆
☆は決勝進出した場合、出場。
※予定は変更になる場合があります。

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この後も、選手の情報をお伝えしていきます!お楽しみに!

ドバイの写真

アメリカチームの泊まっているホテルで、マーティン選手のインタビューをしました。さすがアメリカ!ものすごくゴージャスなホテルです。

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後藤佑季
後藤佑季

後藤佑季(ごとう・ゆうき)

1996年7月30日生まれ 岐阜県出身 聴覚障害(人工内耳使用) 【趣味・特技】料理、カメラ、書道準五段、手話技能検定準2級 【スポーツ歴】陸上(100m走など短距離)、水泳、バドミントン 【抱負】私の聴覚障害(難聴)のような『目に見えない障害』の存在を伝え、様々な障害のある人とない人との橋渡し役になれたらと思っています。自分の身体ではないものを最大限に生かし、自らの可能性を広げる、超人たちの「常識を超える瞬間」を多くの方にお伝えしていきたいです!

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