片腕で、真直ぐ!「誰かのために泳ぐこと」パラ競泳・窪田幸太

競泳 2019年11月20日
写真:窪田幸太選手

おなじみ「推しパラアスリートを発掘しよう」企画。
どうも!恋活継続中、リポーターの大進です。(私も誰かに推されたい)

今日ご紹介するのは、パラ競泳の窪田幸太(くぼた・こうた)選手、19歳。ハニカミ笑顔がキュートな大学2年生です。
生まれた時から左腕の機能がほとんど無く、泳ぐときは「片腕」のみ。しかしそれを全く思わせないほど、真っすぐパワフルに泳ぎます。

9月の「ジャパンパラ水泳競技大会」では専門種目の100m背泳ぎで1分11秒58をマークし、日本記録を更新。自身初のMQS(=東京大会の参加標準記録)突破に注目が集まりました。

去年まで同種目の自己ベストは1分14秒04だったので、その進化の理由も気になる…
ということで早速、大学にお邪魔しインタビューをしてきました!


Q障害について

先天性の左上肢機能全廃です。左腕はあまり動かすことができないので、泳ぐ時は右腕だけを使って泳いでいます。左腕を上にあげるっていう動きが出来なくて。握力も無いに等しいですが、物を指に引っ掛けて”持つ”ことはできます。


Q水泳のキャリアについて

スイミングスクールには0才から通い始めました。そこで小学5年の時に一番上の級になったことを機に卒業しました。
丁度その頃、地元の千葉の新聞に「千葉ミラクルズ」という障害者水泳チームの記事が載っていたのを母が見つけて、教えてくれて。自宅からミラクルズのプールの場所も近かったので、行ってみたんです。それをキッカケに小学5年でパラ競泳を始めました。

写真:幼少時の窪田選手

△9才。水泳が楽しくて仕方なかった。

――健常者チームとの違いは感じましたか?

そんなに大きな違いは感じていなかったですね。最初はシンプルに“楽しい”と言う印象が一番強かったように思います。あの頃はただただ、楽しくて水泳をやっていましたね。周りの選手よりも練習してこなかったですし、タイムに不満とかも無くて。「この日に練習があるからそれに行って、泳いで、大会出て、タイム出して…」と、ずっとその繰り返しでした。
それこそ選手としてじゃなく、自己満足というか。そんな感じでやっていたと思います。



Q 本腰を入れ始めた経緯について

高校3年の時に出場した日本選手権で日本体育大学のコーチと知り合い、日体大への進学を決めました。水泳を続けたかったので水泳部に入部したのですが、それまで週4回だった練習がウエイトも含めて週12回になって(笑)
最初は「どうしたこんなに大変なんだろう」と思ったりしたけど、そこでの鷲尾拓実(わしお・たくみ)さんとの出会いが、東京パラを本格的に目指そうと思うキッカケになりました。


――当時の水泳部マネージャーの鷲尾さんですね?

僕のことも見てくれいたのですが、すごく研究熱心な方で。実際に鷲尾さんも片腕だけで泳いでくれて「こっちの方が良くない?」と泳ぎについて沢山アドバイスをくれました。その指示に沿って練習していたら、なんと100mバタフライで1秒以上タイムが早くなったんです。そこで「水泳が楽しい!」と再び思うようになりました。


――とても貴重な出会いでしたね

自分のためにこれだけ色々してくれる人はいないなと思って。その時初めて「この人の為に頑張ろう」という気持ちになりました。
誰かのために頑張りたいという気持ちにはチカラがあって、水泳に対して真剣に取り組もうという気持ちに繋がったと思っています。



Q専門種目について

100メートル背泳ぎです。この種目では日本記録を持っていて、9月にあった世界選手権の決勝進出タイムに相当します。背泳ぎがMQS突破に1番近い実力を持っていることが分かって、クラスが変わったことも受け、この種目に集中しようと決めました。背泳ぎも片腕で泳ぐんですよ。

写真:背泳ぎをする窪田選手


――クラスが変わった経緯は?

2015年にS9のクラスに認定されていたのですが、去年のアジアパラ大会で、より障害程度の重いS8のクラスに変更されました。


――S8の選手は腕や足など、障害部位も様々ですよね

そうですね。自分の場合は障害が腕ですが、その分キックはフルに使えるので強みにしています。筋肉も結構、自信ありますよ。
ただ結局、腕があったほうが泳ぎは早いと思っていて。水をかくテンポも、プル(水を手でかく力)の強さも、両腕がある方が早いんで。そこが自分の場合は片手な分、ちょっとしんどいかなと思います。

写真:ふくらはぎの2倍くらいある窪田選手の太もも

窪田選手:「思ってたよりゴツいかも(笑)」


Q泳ぎで工夫していること

“今自分にあるもの”を最大限に使うんです。つまり、右手と両足ですね。足が使える分、キックが大事なので、スタートで壁を蹴って浮き上がりまでの伸びで、どこまで距離を稼げるかが勝負です。


――身体の左右のバランスを取って泳ぐのは大変?

生まれた時からこの身体だったので、特にバランスの悪さは感じません。スタートも片腕でやるので、周りから「すごいね」と言われるんですけど。特に意識してバランスを取っているわけでも無くて。小さい時から、体幹とかを無意識に使っているんだと思います。

写真:幼少時サッカーをする窪田選手

△小学生の頃はサッカーや空手も経験。
片腕が使えないことを、周りも気にしなかった。


――この1年の記録の伸びは本当にすごい!

改善したのは、腕を回すテンポですね。今まではキックに合わせた丁度良いタイミングで、腕は添えるだけのような感じで回していたのですが、それだと足頼りになってスピードが落ちてしまってしまってたんです。それを指摘してくれたのも、鷲尾さんでした。
そこで今度は腕を早く回してみたのですが、そうするとキックのテンポが遅くなってしまい…。
「これは意外に難しいな」と気付いたので、今年の夏から試行錯誤をずっと重ねて、最近はキックと腕を“5対5”の割合で動かすよう意識して泳いでいます。


――泳ぎに影響はありましたか?

しっかりタイムも縮まって9月の「ジャパンパラ水泳競技大会」ではMQSを突破できました。自分にはこの“残された部分を最大限に活かす”と言うやり方があっていると改めて思った瞬間でした。それを教えてくれた鷲尾さんには本当に感謝しています。



Q 2020へ向けた課題について

ずばり、【後半の持久力】です。いくら前半が早くてベストタイムで入っても、後半がガタガタだったら結局良いタイムが出ないので。今は後半の泳ぎ方の意識を変えるよう練習しています。
100m泳ぐ練習メニューだったら、最初の50mを5、6割のパワーで行って、ターンしてから「ぶち上げる」みたいな。後半に爆発させる泳ぎ方の意識を体に覚え込ませることで、本番で後半のペースを上げる感覚を身に付ける練習です。実際は本番では前半も全力を出さなきゃいけないのですが(笑)


――最後に抱負をお願いします!

東京大会に出場できたら、自分にとっては初めてのパラリンピックとなります。萎縮せずに、前半から積極的なレース展開でいきたいです。
その場でしか味わうことのできない雰囲気を存分に楽しみたい!
そして自分を育ててくれる大学のコーチ、鷲尾さん、支えてくれる家族や周りの人たちへの恩返しをしたいと思っています。


写真:窪田幸太選手

窪田幸太(くぼた・こうた)
2000年3月6日生まれの19歳、千葉県出身。日本体育大学水泳部2年。先天性左上肢機能全廃により、左腕を上下に動かすことができず、片腕で泳ぐ。50m自由形、100m背泳ぎ、200m個人メドレーの3つで日本記録を持つ。趣味はネットで動画を観ることで、ファッションと音楽が好き。好きな食べ物はグラタン。

三上大進

三上大進(みかみ・だいしん)

1990年10月20日生まれ 東京都出身 左上肢機能障がい 【資格】日本化粧品検定1級、コスメコンシェルジュ、TOEIC900点 【趣味】ショッピング、映画鑑賞、スキンケア 【スポーツ歴】スキューバダイビング、テニス 【メッセージ】パラスポーツを観たことはありますか?個性豊かな選手たち、向き合う障がい、想像を超える競技…。知るほどに心が震える瞬間を1人でも多くの方に体験して頂けるように、ときめく熱いリポートをお届けします!

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