若手の躍進が光った日本選手権!(里見・梶原・今井)―ごとうゆうき・パラバドミントン取材記―

バドミントン 2019年12月27日
写真:里見紗李奈,梶原大暉,今井大湧

12月13日から15日まで千葉ポートアリーナで開かれた、第5回日本障がい者バドミントン選手権大会。
文字通り、パラバドミントンの日本一を決める大会です。
今大会は、いよいよ来年に控えたパラリンピック前に開かれる最後の日本選手権とあって、「“日本一”で、パラリンピックに臨むんだ」と、選手たちの意気込みもひとしおでした。

世界ランキング上位の選手たちが、“日本一”の称号を目指して、しのぎを削る…
そんな中、光っていたのは若手の躍進でした。

今回は、私の注目した若手選手の模様をお伝えします!


■里見紗李奈
(さとみ・さりな) |WH1(車いすのより障害の重いクラス)優勝・女子ダブルスWH1-2 優勝

写真:笑顔の里見紗李奈

笑顔が素敵な21歳。
2016年高3の時に交通事故に遭い、翌2017年からパラバドミントンを始める。
ことし行われた世界選手権では、シングルスで初優勝を飾った、世界王者です。

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車いすクラスの特徴、のけぞって打つショット。のけぞる寸前に相手の位置を見て、動きを予測し、打ち込む。

ベテラン福家育美(ふけ・いくみ)選手に、21-8、21-11と圧倒的な力を見せつけ去年に引き続き優勝。

「まずはほっとしています。練習していたドロップショットが出せたり、(障害を負ってまだ日が浅いので)チェアワークが少しずつうまくなったりしたことが、意識していた福家さんに勝つことができた要因だと思います」

「とにかく楽しかったです。私が(はい!とか)声を出しちゃうんですけど、福家さんも声を出してくれて本当に楽しかったです」

写真:里見選手

まさに、「はい!」と言っている瞬間!

「地元・千葉での開催ということもあって、普段は海外遠征でなかなか頑張っている姿を見せることが出来ないんですけど、そういう意味では、家族や地元の友人たちに恩返しができたのかなって、地元パワーでの優勝だと思っています」

写真:里見選手
写真:里見選手(右)と、ダブルスを組む山崎悠麻選手(左)

ダブルスを組む、山崎悠麻(やまざき・ゆま)選手(奥)と。世界王者の山崎選手と組んだことが、里見選手が飛躍するきっかけとなった。

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点が決まった時のハイタッチ。2人とも、シングルスは緊張するものの、ダブルスはとにかく楽しいのだという。

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コートに入る時にも、ハイタッチをする。

笑顔が常に溢れる里見選手ですが、内に秘めたる強い思いがありました。

「私は“見えない努力”をたくさんしてきました。とにかく、とにかく練習してきたんです。そもそも中途障害なので、チェアワークだったり、打つフォームだったり。そういう見えない努力があって、ここにいるんだってことを、是非知ってもらいたいです。」と話す、笑顔のシンデレラは、強い思いを抱いて2020年を迎えます。


■梶原大暉
(かじわら・だいき) |WH2(車いすのより障害の軽いクラス)優勝・男子ダブルスWH1-2 優勝

写真:梶原大暉

まだどこかあどけなさの残る、18歳。福岡在住。
野球少年だった14歳の時に交通事故にあう。2018年の秋に国際大会デビューしたばかり。

写真:梶原選手

前回王者で、ことしの世界選手権銅メダリストの渡辺敦也(わたなべ・あつや)選手を破りました。
渡辺選手に勝ったのは11月に行われた国際大会に続き2度目。勢いに乗る梶原選手。

「渡辺さんに勝てて、本当に嬉しいです。少しずつ、自信がついてきました。でもまだまだ課題はたくさんあるので直していきたいです」

写真:梶原選手

梶原選手も、里見選手同様に、ダブルスで組んでいるレジェンド村山浩(むらやま・ひろし)選手から多くを学び、吸収しているという。

村山選手は梶原選手の1年間の飛躍について、「本当に、頼もしくなりました。最初の頃はサポートしてあげる感じがどうしてもあったけど、最近はもう、任せている。むしろ私が助けられているくらいですよ」と話す。

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村山選手(左)から「プレーはもちろん、メンタル的なところとか、全てを学んでいます」と梶原選手。

写真:タッチをする村山選手(奥)と梶原選手(手前)
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梶原選手(左)が囲み取材にて「村山さんにいろんなことを教わっています」というと、村山選手(右)が「そんなことないよ!」と返す。

強みはチェアワークと話しますが、それには地元のクラブで毎回1時間かけてみっちりチェアワークのみの練習を重ねてきたことが自信になっているのではと感じました。

今年度で高校を卒業する梶原選手。
来年の春からは関東の大学に進学予定だそう。
関東には、村山選手をはじめとして強豪の選手が集うため、より腕が磨かれるのではないでしょうか。

写真:梶原選手

さらなる飛躍が楽しみです!


■今井大湧
(いまい・たいよう) |SU5+(上肢障害などのクラス)優勝・男子ダブルスSU5+ 優勝

写真:今井大湧

177cmの長身から生み出されるスマッシュが武器の21歳。
先天性の右腕欠損。
バドミントンを始めたのは小学4年の時。中学時代は県大会でベスト8に入り、強豪・愛工大名電高に部活動推薦で進学するほどの腕前だ。現在は日本体育大学に所属。昔も今も、健常者と同じメニューをこなしている。

高校生の時、東京パラリンピックでパラバドミントンが正式採用されることが決まり、パラバドミントンの世界に足を踏み入れた。
2016年に初めて国際大会に出場し、今ではパラバドミントン界のエースにまで上り詰めた。

写真:今井選手

上肢障害のクラスは、一般のバドミントンとルールは変わらず、スピードの速い展開が見どころ。

「優勝ができて、うれしいです。3連覇する難しさを実感しました。日体大は日本でも(バドミントンが)トップレベルの大学です。その中で強くなれれば、パラバドミントンでも勝てると思って練習に取り組んでいます。健常者と障害者という分け目を感じたことはありません」

写真:今井選手

去年の日本選手権では、「メンタルの弱さが課題」と話していた今井選手ですが、ことしは一味違った様子。
お聞きすると「ことしはパラレース(東京パラリンピックに出場するため、世界各国の大会を回ってポイントを貯める)があって、なかなか練習としてはできない部分もあったけれど、試合を追うごとに強くなってきているという実感がありました」

写真:今井選手

「特に強くなったのは、自分が相手に動かされていて、体力を消耗している場面でも、自分が相手を動かすことができるようになってきたところです。ウエイトで体を作ってきたのも、きついところで頑張ることができるメンタルが強くなったことも要因です」

写真:今井選手

少し控えめな今井選手は、東京パラリンピックでのメダルを目標に、シャトルを追い続けます。

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ベテランの活躍はもちろんですが、私と年代の近い若い選手が活躍するのを見ていると、とても親近感が湧いてきます。
もうすぐそこに迫っている東京パラリンピックでの活躍がさらに楽しみになりました!

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後藤佑季
後藤佑季

後藤佑季(ごとう・ゆうき)

1996年7月30日生まれ 岐阜県出身 聴覚障害(人工内耳使用) 【趣味・特技】料理、カメラ、書道準五段、手話技能検定準2級 【スポーツ歴】陸上(100m走など短距離)、水泳、バドミントン 【抱負】私の聴覚障害(難聴)のような『目に見えない障害』の存在を伝え、様々な障害のある人とない人との橋渡し役になれたらと思っています。自分の身体ではないものを最大限に生かし、自らの可能性を広げる、超人たちの「常識を超える瞬間」を多くの方にお伝えしていきたいです!

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