新型コロナウイルスによる、障害のある人への影響 ~ごとうゆうき 取材メモ~

2020年4月11日
写真:マスクをし、右手を少し丸めて右こめかみに指先を当てる後藤佑季リポーター

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、緊急事態宣言が出されました。

この写真は、「困る」という手話です。
障害のある人は、思ってもみなかった形で、様々な影響を受けています。

4/9(木)の「おはよう日本」でもお伝えさせていただきましたが

聴覚障害のある人はマスクがあることによって、口の形や表情が読み取れずに会話ができなくて困っています。
重度難聴で人工内耳を使っている私もその一人です…)

この記事では「おはよう日本」では時間の都合でお伝えしきれなかったことを、まとめてみたいと思います。


■会話を理解する ~人工内耳を使う私の場合


私のように聞こえにくい人は

・音
・唇の動き
・表情
・文脈からの予測

など、様々な要素から、組み合わせて文章を頭の中に「組み立て」ていき、「文章」として理解をしています。


私の場合、人工内耳をつけているときは

・音…4割
・唇の動き…3割
・表情…1割
・文脈からの予測…2割

このような割合で文章を理解しています。


人工内耳をつけていないときは全く聞こえないので

・音…0割
・唇の動き…5割
・表情…1割
・文脈からの予測…4割

の割合で組み合わせて、文章を構成しています。


これが、マスクをつけることによって人工内耳を着けていても

・音…5割
・唇の動き…0割
・表情…0割
・文脈からの予測…5割

と、目で見える情報が少ないので、一気に予測の割合が高くなります。

そうすると、予測の割合が高まり、「たぶんこうやって言ってるな」と思って話をしていると、行き違うことが増えるのです。


今回の放送でロケをして初めて知ったのですが、聞こえる人はマスクをしたときに声の聞こえ方に大きな「違いがない」のですね!
私は、マスクがあるとこもって聞こえ、かなり声の音質が変わるように思うので、とてもびっくりしました。

そのため、大きな声で話されても、音は聞こえにくいままなのでなかなか理解することは難しいのです。
(今回のロケでは、「検索」と「対策」の違いが分かりませんでした)


また、聞こえにくい人の中には、“子音”が聞き取りにくい人も多くいます。
つまり、母音(a,i,u,e,o)は何かがわかるのですが、子音が聞き取りにくいため、普段は唇の形や動きを見て、子音を区別しています。

例えば、「ぱ」行が分かりやすい例ですね。
ぱぴぷぺぽ、と口にしてみると分かると思うのですが、パ行を発声するときには、唇がくっつきます
これによって、たとえば「ごはん」と「パン」の区別をしています。
くっついたら「パン」、離れていたら「ごはん」という具合です。
(は行を口にしてみると、唇はくっつきません)

マスクによって、唇の動きは見えなくなってしまうため、区別する手段が失われることになるのです。

写真:マスクで覆われた口元

もちろん、聞こえ方は様々ですし、コミュニケーションの方法も様々です。

非常事態のために「外して」とは言いにくい状況の中、必要最低限のものを買いに行ったとき、病院に行った時ですら、聞き取れないのです。コンビニのレジにスクリーンが取り付けられたことで、さらに声が聞きづらくなる…、など、思ってもみなかった状況は今後も増えていきそうです。


■聴覚障害者への配慮だけではない“工夫”に

こうした状況の中、配慮をお願いするのは心苦しい部分もあるのですが、「聴覚障害者に配慮をする」という考え方を変えてみるのはどうでしょうか。

そもそも、「聞こえにくい」人はいわゆる聴覚障害者だけにとどまりません。
高齢の方や、片耳失聴の方、WHOが警告したような、スマホ難聴の方など幅広く聞こえにくい人は存在しています。

そうした人たちへの工夫として、例えば、筆談指差しボードがあるといいのではと思います。
筆談は、紙とペン以外にも、スマホやタブレットなどでもできます。

写真:「保険証はお持ちですか?」と書かれたノートとペン

例えば、病院でのワンシーン。

写真:電子メモパッド

スマホなどのほかにも、こうした電子メモパッドも使いやすいと思います。

指差しボードとは、通常対応の中でよく使う言葉をあらかじめ書いて・印刷しておくのです。
飲食店でいうと、メニューのほかにサイズやオプションなどを書いておくイメージですね。

特に指差しボードがあると飛沫感染のリスクも減りますよね。
外国人の人も分かりやすいのではないでしょうか。高齢の方も、すぐに理解をすることができます。

写真:「薬のアレルギーはありますか?」と書かれた紙の下に「Do you have any allergies to medication?」という英語の表記 はい・YES いいえ・NO

例えば薬局で。英語も併記するといろんな人に使えます!

「聞こえにくい」と思っている人たちの中には、会話がわからないので外に出るのがおっくうになっているという人も多くいます。
そうした人たちが、筆談や指差しボードでの対応があると分かったら、買いに行きたくなるのではないでしょうか。
新たな顧客獲得にもつながると思います。

こうして、なかなか難しさが伝わりにくい「聞こえにくい」ということについて、対応することが、「誰もが生きやすい」共生社会につながっていくのではと思います。


■障害のある人への影響 ~視覚障害、知的障害、車いす、重度の方

ほかにも、視覚障害のある人は触って確認することが多いのですが、どこが感染しているかわからないため、触れなかったり、マスクをしている人がわからなかったりしているそうです。

知的障害のある人はそもそも「抽象的なこと」の理解が難しい人が多いのですが、「見えない」新型コロナウイルスの怖さを理解することも難しい人がいるそうです。

手動の車いすを使う人は、歩くときにタイヤを触らないといけないため、どうしてもリスクが高くなる、と言う人もいます。

重度障害の方でヘルパーを利用している人は、そもそも基礎疾患により重症化リスクが高いのに加えて、ヘルパーさんがもしかしたら感染しているかもしれないという恐怖があります。
でも生活のためにはヘルパーさんが必要。
さらにヘルパーさん自身も、通うことによって感染リスクが高くなってしまいます。
これは、聴覚障害での手話通訳や、視覚障害でのガイドにも共通する課題です。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまで見てみぬふりをされてきた様々な問題があぶりだされてきているとも言えるのではないでしょうか。

今一度、何ができるのかを私自身も考えていきたいと思います。



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後藤佑季

後藤佑季(ごとう・ゆうき)

1996年7月30日生まれ 岐阜県出身 聴覚障害(人工内耳使用) 【趣味・特技】料理、カメラ、書道準五段、手話技能検定準2級 【スポーツ歴】陸上(100m走など短距離)、水泳、バドミントン 【抱負】私の聴覚障害(難聴)のような『目に見えない障害』の存在を伝え、様々な障害のある人とない人との橋渡し役になれたらと思っています。自分の身体ではないものを最大限に生かし、自らの可能性を広げる、超人たちの「常識を超える瞬間」を多くの方にお伝えしていきたいです!

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