新型コロナウイルスの感染拡大によって炙り出された、障害者の生きにくさ ~当事者のオンライン記者会見から|後藤佑季

2020年5月28日
写真:オンライン記者会見をパソコンのモニターで見る後藤佑季リポーター

外出自粛となった大型連休中の5月4日、視覚障害者や聴覚障害者の日常を体験する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」「ダイアログ・イン・サイレンス」を展開するダイアローグ・ジャパン・ソサエティが、オンライン上で記者会見を開きました。

ダイアローグ・ジャパン・ソサエティは、アンケート方式で4月23日から26日まで実態調査を実施。全世代、165人が(視覚障害者71人、聴覚障害者80人、重複障害者7人、その他7人)が回答したそうです。


緊急事態宣言は解除されましたが、
このアンケートによって、視覚障害者と聴覚障害者が非常時において、普段の生活よりもさらに困難を抱えてしまうことが炙り出されました。
今回のコラムは、記者会見の発表をもとにお伝えします。


■仕事・学習環境の変化

全体の約65%が現在の仕事・学習環境に不便がある、さらに約54%が「経済的状況や雇用面、学習状況に不安がある」と回答。
とくに視覚障害者は63%が「不安がある」と回答しました。

画像:グラフ


具体的な声として、以下のように上がっています。

・会社にもしものことがあったら真っ先に障害のある自分が切られるんじゃないかと心配。(30代・視覚障害)
・周りの人がマスクをしており、聞き取りが困難(聴覚障害・多数)

・ GW明けから始まるオンライン授業についていけるかが不安です。また授業を担当される先生と直接話すことが難しいため、私の障害のことや必要な配慮について、きちんと伝えられるかも心配しています。(学生・視覚障害)
・ 今は自宅で自粛中で授業も開始していませんが、このまま感染が拡大しオンラインレッスンが行われることになると、板書などが見えず授業についていけなくなるのではないかという不安があります。(学生・視覚障害)

大学時代、聴覚障害のある私は、先生や大学と相談して、試行錯誤しながら、授業に参加できる環境を一つ一つ整えてもらいました。そうしたそれぞれの障害にあわせた配慮を、障害のあるなし関係なく誰しもが手探りな中、しかも直接会わずに相談するのは、何倍もの難しさがあるのではないかと思いました。


■生活環境の変化


全体の約60%以上が「生活や外出面に不便がある」と回答がありました。
特に視覚障害者からは下記のような声が集まったそうです。

・1人で歩いているときに誰かにガイドを頼もうとしても頼みづらくなった。
・同行援護や付き添いなどの人と一緒に行動していると周りの目が冷たいといわれてあまり外出できなくなった。
・買い物のサポートをスーパーで断られる。ネットスーパーが予約でいっぱい。

・間隔をとって並んでください、と言われても見えないので間隔がわからない。
・他の人とのソーシャルディスタンスが感覚的にわからない。


■情報取得の変化

画像:グラフ


全体の約41%が「情報取得について不便がある」と回答。とくに聴覚障害者では半数が不便と感じていることがわかりました。

視覚障害者からは、情報の視認性にまつわる下記のような声が寄せられました。

・視覚化された情報が多いため、正しい情報がなかなか届きません。
・画像に詳しいデータがある場合に「こちらをご覧ください」、と言っても見えないのでテレビの司会者は説明をしてほしい。
・TVでの生活情報の中で、手づくりマスクやストレッチなどの説明やオンライン情報では、映像での説明はあっても言葉での説明がないため理解できない。


聴覚障害者からは、手話や字幕対応、電話のみの対応についての不安の声が多く寄せられました。

・再放送時の手話通訳者ワイプが外されてしまう。
・地域のコロナウィルスに関する相談や情報は電話が中心なので、メールやLINEでも対応してほしい。



■当事者が語る不安


記者会見では、視覚障害者の世界を体験する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」や、聴覚障害者の世界を体験する「ダイアログ・イン・サイレンス」で案内役(アテンド)を務める障害当事者が、自らの体験を語りました。

生まれた時から全盲の大胡田亜矢子(おおごだ・あやこ)さんは、
「普段、盲導犬と一緒に歩いています。でも、盲導犬は空いているスペースに入っていく習性があるので、ソーシャルディスタンスを取りづらく、気を使ってピリピリしてしまいます」

写真:モニターに映る大胡田亜矢子さん

「スーパーなどで、ソーシャルディスタンスをとって並ばなければいけない時、足で人との距離がわかるように、お店の床に(足で踏んでもわかるような凸凹の)テープがあるといいなと思います。マスクが入荷されたかどうかも、紙での表示しかないので、あるのかないのかわかりませんでした」
と語りました。


中途失聴者である松森果林さんは、「(コロナにかかわらず、聞こえない人たちは)常に情報が不足している中で生活しています」と話した上で、次のように話しました。

「コミュニケーションの方法を変えていく必要があると思います。聞こえない私たちに対応する方法は、手話だけではないことを知って欲しいです。会話の際にボディランゲージを加える、何かの物を言及する時に実物を示す、スマートフォンで音声を認識してテキスト化するアプリを活用するなど色々方法はあるのです」

写真:モニターに映る松森果林さん

そして「マスクをしているときも笑顔だけは忘れないでほしいです。マスクをしていても、表情が変わったことはわかりますから」とも語りました。

2人が共通して話していたのは「抗議したいのではなく、存在を知って欲しい」ということでした。


■視覚障害者・聴覚障害者からの7つの提案


そうした状況を受けて、この記者会見が終わった後に「やってほしい」という押し付けではなく、ポジティブに解決できるよう7つの提案が公表されました。

下記は、その引用です。

【視覚障害者からの7つの提案】

1. メディアの画像やグラフは「具体的に言葉に」なれば、みんなと一緒に知ることができる
テレビやホームページ、あらゆるメディアには、写真や絵が多く「ご覧の通り」などの説明がありますが、私たちは見ることができません。ラジオのように、言葉にしてください。また、WEBの写真や画像には文字コメントを入れていただけると、私たちは音声で聞くことができます。

2. 助成金などの説明や申請手段を一緒に考えてほしい

手続きには読み書きが必要で、視覚障害者が一人で行うことが困難です。電話での手続き方法や、担当者が自宅に来ていただけるなど、私たちができる方法を取り入れていただけると安心できます。

3. 「もしも」の場合の移動手段を一緒に考えてほしい

新型コロナウイルスに感染したかもしれず、検査に行く場合、病院や保健所等に単独で公共交通機関を使わず行くことは困難です。初めての道、初めての場所、体調が悪い時には、五感が鈍り、状況把握が普段よりできません。国や自治体から、病院や保健所までの送迎をお願いしたいです。

4. 「触れること」は私たちが情報を把握するための一つの手段です

公共の交通機関などを含め、あらゆる場所で、触れて周囲の状況を確認している私たちです。そのため、ウイルス感染の恐怖と常に隣り合わせであり、周囲に感染させてしまうのではないかという不安も大きいのです。例えば、電車やバスでは、感染への不安から吊り革や手すりは掴まれません。もし空いている席がありましたら、教えてください。そして、席を譲っていただけると嬉しいです。また、沢山の人たちと同じように、もしくはそれ以上に、視覚障害者もマスクや除菌シート、アルコールなどを必要としていることを知ってほしいと思います。

写真:階段横の手すりにつかまる手

5. フィジカルディスタンスや街の変化を、声で伝えてほしい
そもそも目視で確認ができず、“フィジカルディスタンス”と言われても、十分な距離をとることができません。また、街中やスーパーの張り紙などが見えません。並ぶ位置や、お店・薬局の張り紙等になにか変わったことなどがありましたら、店員さんに関わらず、ぜひ声で伝えていただけると助かります。

6. こんなときだからこそ、声をかけていただけると一層あたたかい気持ちになります

以前よりも声をかけてくださる方が減りましたが、このような中でも、気にしてくださる方もおり、うれしくありがたく思っています。視覚障害者が近くで困っているようであれば、声をかけてください。その際には、横に並んで声をかけていただくと分かりやすいです。誘導していただく時には、手のひらではなく、肘や肩を持たせてください。

7. はっきり、笑顔・笑声を

マスクの下の声からも、十分に表情や感情が伝わります。いつも以上にはっきりとした声で、お互いに笑顔、笑い声で、安心できるコミュニケーションをしましょう。

写真:マスクをして笑顔の後藤リポーター

【聴覚障害者からの7つの提案】

1. 手話通訳や字幕があれば、みんなと一緒に知ることができる

今回、多くのメディアが会見時の手話通訳を映してくださっていることに感謝しています。画期的な進歩だと感じています。一方で、リアルタイムの情報でない場合には、手話通訳が映らない場合もあります。また、字幕を必要とする聴覚障害者もおります。可能な限りすべての映像に、手話通訳、そして字幕を付けていただけると正確な情報を共有できます。

2. 「もしも」の場合を一緒に考えてほしい

「もしも」の場合の連絡先に、電話番号の記載のみが目立ちます。聴覚障害者は、「電話リレーサービス」などもありますが、完全に普及しているとは言えません。FAXやメール、LINEなどのSNSでも、ご対応いただけると嬉しいです。また、助成金申請や病院受診の際には、あらかじめ想定される質問事項を文字や図で表示したものを用意していただけると、指をさすだけで意思疎通しやすくなります。

3. 音声認識アプリを使えば、リアルタイムで伝わる

最近は、音声を自動で文字化してくれる音声認識アプリも増えてきています。日常の会話はもちろんのこと、オンライン会議の時など、音声認識アプリを使えば、聴覚障害者も会議の内容をリアルタイムで知ることができます。ぜひこういった機能も活用してみてください。

4. 声も筆談も、大きくはっきりと

聴覚障害者といえど、その障害は様々です。マスクをつけるとくぐもった声になりがちですが、難聴や高齢者の方には、大きな声ではっきりと話せば伝わることも多いです。また、聴覚障害者は、筆談でコミュニケーションをお願いすることもあります。ソーシャルディスタンスをはかりながら筆談をする際には、距離があっても見やすいよう、大きな文字で書いてください。

写真:ノートとペン

5. ジェスチャーやボディランゲージも、みんなにとってわかりやすい
手話ができなくても、ジェスチャーやボディランゲージでも十分に伝わるものがあります。また、スーパーなどで、袋や箸などは必要かどうか尋ねるときには、実物を見せていただければすぐに伝わります。視覚的にわかりやすい工夫は誰にとっても便利です。

6. 手話はフィジカルディスタンスが取れるコミュニケーション手段

手話は、大声を出さなくても想いを伝えることができます。また、相手が見えれば、離れていてもコミュニケーションがとれるのでガラス越しでも自由自在に会話ができます。この機会に、手話についても興味をもってもらえたら嬉しいです。

写真:左右の人差し指を伸ばし、左手が上・右手を下に置く後藤リポーター

手話、という手話をしています!

7. マスクをつけても、アイコンタクトと笑顔を
マスクをしていても、笑顔は目や頬の動きで伝わってきます。アイコンタクトをとるだけで、安心ができます。マスクをしているからと言って、顔の表情はお休みせず、目と目を合わせてお互いにやさしい気持ちを伝えあいましょう。

写真:マスクで真顔(左)と、笑顔の後藤リポーター(右)

真顔と比較しても、よくわかりますよね!

・・・

私は今回、初めて「オンライン記者会見」を経験しました。

写真:オンライン記者会見をパソコンのモニターで見る後藤佑季リポーター

聞こえない人も、聞こえる人も、見えない人も一堂に会し、言葉をつなげることができる。
テクノロジーの発展は、まさに障害を障害でなく感じさせてくれると感じました。

今回の会見では視覚障害者に対しては、グラフは数字を使って説明され、聴覚障害者に対しては手話通訳がつきました。
ただ、同時進行で行われるミーティングの中で、字幕表示やパソコンノートテイクなどの文字サポートはなかったので、手話のわからない難聴者は難しかったかもしれません。
もちろん、面と向かっての方が温かみも感じられますが、オンラインでもそうした「空気」が伝わる方法は見つかるかもしれません。「みんなが」わかりやすいオンラインの形は、すなわち「みんなが」わかりやすいテレビの形につながるのではないかと思いました。

・・・

新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けて、様々な形で「ニューノーマル」や「新しい生活様式」が提唱されています。

この機会に、今までは忘れ去られがちだった障害のある人のことも含めて、“みんなが”暮らしやすい社会を構築していけるのではないかと思っています。

これまでの社会は、マジョリティーがマジョリティーの視点で作られてきたがために、障害のある人が「生きにくい」社会になっていました。
新しい方法を考えざるをえない「今」を機会に、最初から「障害のある人も含めて」社会を構築していくことで、障害のある人だけでなく障害のない人も全員が生きやすくなるのではないでしょうか。

来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本は「こんなに素晴らしい国なんだ」と伝わるような社会にしていきたいですね!

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後藤佑季

後藤佑季(ごとう・ゆうき)

1996年7月30日生まれ 岐阜県出身 聴覚障害(人工内耳使用) 【趣味・特技】料理、カメラ、書道準五段、手話技能検定準2級 【スポーツ歴】陸上(100m走など短距離)、水泳、バドミントン 【抱負】私の聴覚障害(難聴)のような『目に見えない障害』の存在を伝え、様々な障害のある人とない人との橋渡し役になれたらと思っています。自分の身体ではないものを最大限に生かし、自らの可能性を広げる、超人たちの「常識を超える瞬間」を多くの方にお伝えしていきたいです!

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