リモートの時代、もっと広がる手話の可能性〜 by後藤佑季

2020年6月30日
写真:左上から時計回りに「ありがとう」「拍手」「ゆっくり」「早い」「トイレ」「待って」「同意」「わからない」という手話をする後藤リポーター

「Withコロナ」という言葉が定着し、社会が新たに道を進み始める中、この機会に新しい“普通”、「ニューノーマル」を構築していこうという動きが出ていますね。

その中でも顕著なのが、“リモート化”や“オンライン化”だと思います。
学校や塾の授業、会社の会議、書類決済、などなど…
そしてパラアスリートたちのトレーニングにも使われるようになっています。

今まではいわば、「頭では分かっていてもできない」状態だったと思いますが、新型コロナウイルスの影響によって「せざるを得なく」なりました。

こうした「ニューノーマル」の構築が模索される中、
今よく行われているビデオ通話アプリを使ったオンライン会議などに役立つのが、「手話」なんです!

6月12日放送の『おはよう日本』でもご紹介させていただいた
のですが、
ここまで読んで「どういうこと?」と思われたみなさん、「手話ってこんなに便利なんだ!」とか、「手話って聞こえない人のためだけではないんだ」と思ってもらえたらうれしいです😊

▼目次
手話は“言語”
オンラインで手話が広まっている?!
まだまだある、手話ってこんなに有用!
厳選!オンラインで役立つ9つの手話動画


■手話は“言語”

まず前提として、これまでにも何度かお伝えしていますが、私は日本語が母語で、第2言語が“手話”です。

そのため、手話のネイティブスピーカーや、首相会見や知事会見の時によく目にするような手話通訳の人(こういう人たちの存在の大切さが皆さんに広く伝わるようになったのも、新型コロナウイルスによるいい点ですね)のように、スラスラ~っとはできません…
英語で例えるならば、現地の人とおおよその意思疎通はできるというレベルです。

なぜ「第2言語」という表現をしたのかというと、手話(正確には日本手話ですが、ここでは手話とさせていただきます)は日本語とは文法や語彙も違う、1つの独立した「言語」だからです。

言語である手話への理解と普及などを目標とした「手話言語条例」が全国の自治体で作られています。全日本ろうあ連盟によれば、2013年の鳥取県を皮切りに2020年4月現在、28道府県/12区/249市/51町/1村で成立しています。

語順などの細かい文法についてはここでは触れませんが、指の動きと一緒に行う表情や眉の上げ下げ、視線などが文法的要素(命令、否定など)の役割を果たしたりします。

日本語とは別の文法がある“言語”なのだと理解していただければうれしいです。


■オンラインで手話が広まっている?!

新型コロナウイルスの感染拡大により、自宅にずっといることになった私が、手話も使いながら家族とビデオ通話をして「手話って有用だなあ」と思っていたとき、その考えをさらに加速させたのが、SNSでとある動画を見かけたこと。
それは、大阪大学の非公認手話サークル「Flono」のメンバーがあげていた、こちらの「オンラインで使える手話動画」でした。

左:井元遥花さん、右:松居ひなさん

この手話サークルは、代表の大川公佳さんがろう者。彼女は学部でただ1人のろう者のため、もっといろんな人とコミュニケーションを取りたい!と友人の井元さん、松居さんと、去年の10月に立ち上げました。

大川さんが先生役となって手話や指文字を指導し、声を出さないコミュニケーションに取り組んでいます。

写真

先生役となって、手話や指文字を教えている大川さん(右)

私が目にした動画は、サークル内でビデオ通話をするときに「手話は便利だ」と日頃から実感していた井元さんと松居さんが作ったそうです。

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井元さん:「“大丈夫”、“トイレ”とか、“わかった”とかは健聴者仲間同士でも使っています。みんながビデオ通話するようになったコロナの今だからこそ有用だと思って作りました」

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松居さん:「大人数が参加するビデオ会議などで、一斉に声を発すると(リアル会議以上に)うるさいですよね。その点、同意やリアクションなどが手話なら、静かで一目瞭然。他にも旅行に行ったときなど、周りにたくさん人がいても(うるさくても)、仲間だけでわかるコミュニケーションになります」

写真:大川さん

これを聞いた大川さんは
「今回の動画をきっかけに、ろう者にとって“当たり前”の手話を使うことが、健聴者にとっては“有用”なものと知って、面白く感じました」と話していました。


写真:オンラインミーティングをするFlonoのメンバー

Flonoではコロナによるオンラインでの活動で、「ミュート」にすることで、声に頼らず、より手話を学びやすくなったそうです!(画像をよく見ると、みんなミュートにしています)


■まだまだある、手話ってこんなに有用!

…と、ここからは手話の有用なところをお伝えしたいと思います!
千葉県で、聴覚障害者の松森果林さんが「ママ友と話をしたい!」と始めた、井戸端手話の会では、聞こえるメンバーが日常生活に取り入れていたので、その様子も併せてご紹介します。

写真

2003年結成当初の井戸端手話の会(松森さんご提供)


「声に出さない」=唾が飛ばない!


当たり前ですが、手話は音声言語ではありません。
そのため、声は“使わない”のです。

口からの飛沫感染が危険視されている新型コロナウイルスの状況下、とても役立つと思いませんか?
手話を使えばその心配はありません。

写真

井戸端手話の会メンバーの西澤めぐみさんが、通っているダンス教室のLui先生。「大丈夫?(ダンスがわかる?)」という手話をレッスンの中で使っています。


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西沢さんが「手話を使ってみては?」と、先生に提案したのだそう。


「声に出さない」=遠くでも会話ができる


さらに、声を出さないので、遠くの人とも簡単に会話ができます。
私の家族や友人は、簡単な手話を覚えてくれているのですが、例えば駅のホームと、別のホームでも声に出さずに会話をしたり、2階にいる人と外にいる人とで手話で会話をしたり…

大声でのどを痛める心配や、話の内容を誰に聞かれるでもなく会話ができるのです!
(手話が分かる人にはわかってしまいますが…)

写真:踊り場の上と下で話をする井戸端手話の会の方

たとえば、こんなに離れていても会話できます!
井戸端手話の会の方々は、マンションの端と端で出会ったときも、近寄ることなく「今買い物行ってきたの」など、簡単な会話をしているそうです。



「声に出さない=言いづらいこと」も、さくっと伝わる

これは②でもチラッと書きましたが、話の内容を誰かに知られることが少なく、簡単な手話なら会話を遮ることがありません。

例えば、友達との雑談の中、「トイレに行きたい…」と思うことは誰しもあるはず。
そんな時、「トイレ(手話は次の章で説明します!)」という手話をさっとやるだけで、「トイレに行ってくるね」ということが伝わります。

雑談中だけではなく、どこかに出掛けた時、離れたところにいる同行者に「ちょ、ちょっとトイレ行ってくる!」って言いたい時もありますよね。
そんな時も「トイレ」という手話1つで、あら不思議!😄

手話を使うと、遠いところにいる友人に向かって大声で叫ぶこともなく、周囲の人に知られることなく、走ってその要件をわざわざ伝えに行くこともなく、スマホを急いで取り出してメッセージアプリに打ち込むこともなく、伝えられます!

写真:オンラインミーティングの画面

Flonoの聞こえるメンバーが所属している別のサークルのオンライン会議でも、手話を使うことを提案。
「うなずくだけよりも反応が分かりやすかった」という声が。



写真:リビングでパソコンを操作する夫(右)と、手話で質問する妻(左)

井戸端手話の会のメンバーの大西紀子さん(左)は、在宅勤務をしている夫の邪魔をしないよう、手話を使ってコミュニケーションをとっているそうです!


お伝えしたのはかなり限定的な、私の独断と偏見による便利さですが、もちろんこのほかにもたくさんあります。
「便利さは分かったけど、どうやって日常で使うの?」と思った人、たくさんいらっしゃいますよね。

次の項では「この動画を見てすぐに使える!かんたん実践手話」をいくつかご紹介します!


■厳選!オンラインで役立つ9つの手話動画

この記事を書くにあたって、私は考えました。
前述した「トイレ」は、今すぐにでも覚えて欲しいくらい簡単で有用な手話ですが、それ以外はどんなところで手話が有用なのだろうか、と。
そこで、手話サークルFlonoの皆さんが紹介していた動画を参考に、「オンライン」の状況に特化してみました。

「ビデオ通話アプリ」はとても便利ですが、オンラインで会議や、オンライン飲み会など複数の人と会話をすると、雑音がどうしても、入っちゃいますよね。
私は、雑音と人の声の聞き分けが難しいので、もう、大変。
健聴者の方でも聞き取りにくいときもあり、それを防ぐために「発言者以外はミュートで」という対応、よくされていると思います。

でもそうすると、相づちがわかりにくくなって、喋っている方は理解してもらっているのか、このまま話してもいいのか不安になりませんか?

音声が乱れて、映像しかわからない時、などにも役立つようなオンライン会議でも使える簡単な手話をご紹介!
※同じ意味の手話が複数あることをご承知おきください

ぜひ明日の会議から、いや、この後の会議や飲み会から、使ってみてください♩


話し手の話が早すぎて聞こえない時に 「早い!」「ゆっくり!」


複数人で会議をしている時、たまにいますよね、話が早い人。
話を遮らずとも、この手話をやればひと目で伝わります。

「早い」:右手を右から左に早く動かしながら、右手の人差し指と親指をグーの状態から出す(矢が飛ぶように早いさま)


「ゆっくり」:「早い」の逆。右手の人差し指と親指を左から右にゆっくりと動かす。


相づちなど、同意したい時に 「ですよね」


うんうん、とか普段人と面して話している時にとっている相づち動作。
オンラインではそれが伝わりにくい部分がありますよね。
そんな時、「ですよね」「そうだよね」「そうそう」という手話を使えば一目瞭然!

「同意」:両手を上に向けながら、両手の親指と人差し指を2回くっつける。


話し手が何を話したかわからなかった時に 「わからない」「待って」


わからないことを、表現するのって難しいですよね。
そんな時には「わからない」、「待って」の手話を!

「わからない」:右手で、右の肩をぱっぱっと2回、払うように。ゴミを落とすイメージ。

「待って」:右手を折り曲げ、あごの下におく。(由来は首を長くして待つ状態から、という説)これは「待つ」という手話ですが、表情や文脈で「待って」という“依頼”の意味になります。


素晴らしい!と伝えたい時に 「拍手」


拍手は言葉ではありませんが、手話の表現があるんです。

両手の手のひらを、ひらひらと振るだけで、手話の「拍手」。
音は出ないけど拍手していることは一瞬で伝わる、便利な手話です!



会議が終わった時に 「お疲れ様」「ありがとう」

「お疲れ様」:右手をグーにし、もう片方の腕をトントンする(マッサージの様子)

「ありがとう」:両手を広げ、左腕を体の前に横に置き、右手は左手の上からあげていく(由来は相撲で賞金を取る時の仕草から、という説)

この2つは、会話の締めくくりに使えるので、まずこの2つを覚えることがお勧めです!


さりげなく伝えたい!「トイレ」


ここまで!引っ張りました!「はよ教えてよ」と思った皆さん、すみません。
お待ちかねの「トイレ」です。

「トイレ」:よくやるOKの、丸の部分を離します。(右手でやった時に、手の形が人から見た時に「W.C」となります)

・・・

どうでしたか?
手話サークルflonoの皆さんが紹介していた動画の内容や、井戸端手話の会の様子をもとにして手話についてお伝えしました。
(書いていて思いましたが、何気なく使っている手話を言葉だけで説明するのって、難しいですね…)


井戸端手話の会の松森さんは、
「手話というのはやっぱり聞こえない人にとっての大切な言語の1つです。でも、それだけではなくて、聞こえる人たちとコミュニケーションするための方法として手話を覚えてもらえれば、今のようなコロナウイルスが流行っているような状況でも、距離をとって話をする事もできるので、本当に助かるなって思います」と話していました。

松森さんのご友人で、井戸端手話の会に入っている伊能直美さんは、本屋さんでお仕事をされているそうですが、ろう者の方が来ても手話を使っていいのか迷うそうです。

写真

左端から伊能直美さん、大西紀子さん、松森果林さん


聞こえる人も手話を使える人が増えたら、伊能さんもきっと気兼ねなく手話で話しかけられるのでは、と思います。

先日、聴覚障害者の中には、相手がマスクをしていると唇の動きや表情が読めなかったり、音質も変わったりするので話がわからない、もしくは話しかけられていることがわからない人がいるということをお伝えしましたが、今回書いたように、簡単な内容なら手話で伝えるのも1つの方法ですよね。
(厳密には、手話にも表情は大切なので透明マスクの必要性が高まっています)

コミュニケーションは「声」だけではないのだということを、ぜひ頭の片隅に置いてもらえるとうれしいです。
コミュニケーションも、ニューノーマルに!



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後藤佑季(ごとう・ゆうき)

1996年7月30日生まれ 岐阜県出身 聴覚障害(人工内耳使用) 【趣味・特技】料理、カメラ、書道準五段、手話技能検定準2級 【スポーツ歴】陸上(100m走など短距離)、水泳、バドミントン 【抱負】私の聴覚障害(難聴)のような『目に見えない障害』の存在を伝え、様々な障害のある人とない人との橋渡し役になれたらと思っています。自分の身体ではないものを最大限に生かし、自らの可能性を広げる、超人たちの「常識を超える瞬間」を多くの方にお伝えしていきたいです!

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