ちばえりな取材記 新型コロナウイルスと重度障害者(前編)~コロナ禍で、当事者に何が起きているのか~

2020年11月9日
写真:体育館で永岡真里さんと対談をする千葉リポーター

お久しぶりです。リポーターの千葉絵里菜です。

今日は、新型コロナウイルスによって、重度障害のある人の生活がどうなっているか
お話したいと思います。
新型コロナウイルスは、呼吸機能が弱かったり、基礎疾患があったりするなど、
重症化のリスクが高い人にとって、「感染すると命に関わる」感染症です。
そして、重度の障害があり、ヘルパーによる介助が必要な人は、
「家の中の何気ない日常」でも、常に感染リスクと隣り合わせです。


■ 日々の介助で「ソーシャルディスタンスが保てない」

千葉がベッドから車いすへ移乗する様子

これは私が朝起きたとき、ベッドから車いすに移乗するときの様子です。
このように抱えてもらわなければならず、見ての通りヘルパーさんとは密接な状態です。
ほかにも食事をするときや、お手洗い、お風呂など、生活のさまざまな場面で「ソーシャルディスタンスが保てない」ことばかりです。

もちろん、ヘルパーのみなさんも感染対策を徹底してくれていますが、
常に接触してしまう以上、当事者もヘルパーも感染リスクが高くなるー
それが、介助が必要な重度障害者にとってのウィズコロナの世界です。


■介助を受けられず「当たり前の日常が送れない」現実も


新型コロナウイルスの問題は感染リスクだけではありません。
介護事業所がヘルパーの人手をやりくり出来なくなるなどの理由から、
介助の回数が減ったり、介助を受けられなくなったりして、
食事やお風呂といった当たり前の暮らしができなくなってしまう例が
各地で起きているんです。

写真:笑顔の永岡さん

笑顔の素敵な永岡真理さん

その一人、横浜市在住の永岡真里さん(29)を今回取材しました。
難病の脊髄性筋萎縮症で、ほとんど体を動かせず、24時間ヘルパーの介助が必要です。
永岡さんは、障害者スポーツ『電動車椅子(いす)すサッカー』の日本代表選手で、
国際大会(アジア・太平洋・オセアニアカップ)でも活躍するトップ選手のひとり!
その姿は、障害のある子どもたちの目標にもなっています。

迫力あるプレーが魅力的な電動車椅子サッカー

『電動車椅子サッカー』は、足ではなく、電動車いすでボールを操るサッカーです。
選手の多くは自立した歩行ができない障害がありますが、手や足、口などを使って
電動車いすのコントローラーを操作します。
専用の電動車いすの前には、フットガードと呼ばれるバンパーがついていて、
車いす同士のぶつかりあいや、華麗なボールさばき、ボールの奪い合いなど、
迫力あるプレーが見どころです。
国内の競技人口はおよそ430人(審判やスタッフを含む)、登録チームは33チームです。
(日本電動車椅子サッカー協会調べ、2020年11月時点)

写真:パソコンのモニターで電動車いすサッカーの試合を見ている永岡さん

電動車椅子サッカーの競技映像を見る永岡さん

しかし、新型コロナウイルスの影響で、永岡さんの暮らしは大きく変わりました。
生きがいだったサッカーの練習は全て中止。
永岡さんが所属するチームでは、7月以降に月1~2回程度、練習を再開しましたが、
少人数で、短時間に区切った上、自己判断での参加となっているそうです。

さらに、永岡さんの日々の暮らしに欠かせないヘルパーの派遣は、
人手をやりくりできないなどの理由で、一時は週5日から週1日に減少。
現在は少しずつ増えてきましたが、コロナ以前の状態には戻っていないといいます。

写真:インタビューに答える永岡さん

リモート取材したときの永岡さんの様子

「朝、起床介助ができず、そのままベッドに寝たきりの状態が何日かあったり、入浴も何日もできないときがあったりしたんですけど、どうやって生きていこうかなというふうに思いました」

リフトを使って車いすからベッドへ移乗する様子


当たり前の日常生活を送れなくなってしまった永岡さん。
ヘルパーがいないときは、母親に介助をお願いしています。
でも永岡さんは、
「障害のない人が、家族にお風呂や着替えなどを
家族にしてもらうことがあまりないのと同じで、
私も家族に介助をお願いするイメージが持てない」といいます。

「家族には家族の人生がありますし、この年齢にして介助をお願いせざるを得ないのは、
申し訳ない気持ちです。
これまで通りの生活を送ることができないのはみんな同じなんですけど、ウイルス一つで、
弱い人の最低限の生活にこんなにもしわ寄せがきてしまうんだと感じました」

公園で練習をする様子

『電動車椅子サッカー』専用の車いすに定期的に乗っていないと、体の感覚が鈍ってしまう
という永岡さん。近所の公園で、人がいない時間帯を見計らって練習することにしています。
これが心と体のリフレッシュにつながっているそうです。

写真:体育館で永岡真里さんと対談をする千葉リポーター

去年9月には直接取材させていただきました

私は脳性まひで手足を思うように動かせません。
永岡さんと私では出来ること、出来ないことは全然違います。
また、聴覚障害、視覚障害などさまざまな障害者がいて、
それぞれコロナ禍での大変さは違います。
世の中みんなが大変な中、課題は見えづらいかもしれません。
でも、東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに共生社会への理解が少しでも進んでいってほしい。
障害のある人が置かれている現状をぜひ知ってもらいたい。そう思っています。

後編は、もともと人手不足で苦しんできた介護事業所が、
コロナ禍でヘルパーのやりくりに苦労する中で、新たに始めた取り組みをお伝えします。

【後編】ちばえりな取材記 新型コロナウイルスと重度障害者~ヘルパーが足りない!をどうするか~

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千葉絵里菜
千葉絵里菜

千葉絵里菜(ちば・えりな)

1994年11月3日生まれ 北海道出身 脳性まひ(電動車いす使用) 【趣味・特技】ファッション、初級障がい者スポーツ指導員 【スポーツ歴】電動車いすサッカー、電動車いすスラローム、車いすカーリング 【抱負】パラリンピックの目標の一つとして、“共生社会”というものがあります。パラリンピックを機にみんなが一緒に楽しく過ごしていけるということを私自身とっても楽しみです。取材やリポートを通して笑顔で伝えていきます。

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